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【女子大生スタートアップ取材ブログvol.8】 行って分かった、電子国家エストニアのリアルな暮らし!〜前編〜

こんにちは、この春から大学院に進学しました、上田りさこです。「女子大生」、なんとか延長できました。今後も福岡市のFukuoka Growth Next(FGN)という施設やスタートアップの動きを、イチ大学(院)生の視点から、みなさんに分かりやすくお伝えしていきますよ〜。スタートアップのことがよく分からないという人も、ゆる〜く読んでくれたら嬉しいです。

さて、今回は前々回(http://hash.city.fukuoka.lg.jp/fgn/archives/6)と前回(http://hash.city.fukuoka.lg.jp/fgn/archives/7)の続きです。FGNでたっぷり予習を終えた後、「電子国家」と呼ばれる北国、エストニアに卒業旅行で行ってきちゃいました!

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空は真っ青でいい天気! …だけど、着いた瞬間、他のヨーロッパと比べものにならないほど超・極寒。この時ちょうどヨーロッパあたりに大寒波が襲来していたタイミングだったみたいで、なんと、マイナス26℃…! エストニアは冷凍庫より寒い?!

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凍えながら、2日間のあいだにエストニアの学生と現地在住の日本人学生、エストニアのスタートアップ関連企業2社にコワーキングスペース2ヶ所、と…計7つもの拠点と人からお話をたっぷり聞いてきました。前々回の記事を読んでもらえれば分かると思いますが、ヨーロッパ行きを決めた時点からほぼ勢いです。女子大生の勢いをエストニアで使い果たしてきてしまった気がします。果たしてちゃんとレポートできているのか、最後まで見届けてくださいね。

 

◆エストニア国民しか見れない秘密のページ、見せてもらいました

エストニアといえば、思い浮かぶのは「電子国家」や「バーチャル国家」というイメージ。海外にいながらエストニアの国籍が取得できたり、はたまたエストニア国民は家にいながら引っ越しや銀行の手続きなど、色々な公的手続きをウェブ上で行うことができたりするんだとか。日本だと、時間内に役所や銀行に行かないといけないし…って考えると、便利でうらやましい! しかもエストニアのその仕組みは約10年前から実現されていて。でも、実際その仕組みはちゃんと活かされているの? 本当に便利なの? そんなエストニアの人びとの暮らしのリアルを知りたくて、エストニアの首都・タリンを訪れました。

 

世界遺産でもあるタリン旧市街の中にある、築70年以上という歴史あるチョコレートカフェで、Kaire(カイレ)さんという女性に会いました。前々回(http://hash.city.fukuoka.lg.jp/fgn/archives/6)、福岡市スタートアップカフェコンシェルジュの佐藤さんがその場でメッセージしたら即レスしてくれた、誠実に違いない女性です。

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(チョコレートカフェはカイレさんのおすすめ。地元の人や観光客にとっても人気スポットだそうです)

カイレさんは、エストニア生まれ、エストニア在住の生粋のエストニア人。カイレさんはタリン大学で日本について学んでいるらしく、同じクラスには20名の学生がおり、全体だとそれ以上の数の学生が日本のクラスを受講しているみたいです。意外と人気なんだなぁ。カイレさんは母語のエストニア語に加えて英語も話せるそうで、英語で話していただきました。私も初の英語インタビューチャレンジです!

やっぱり気になるのは、ずっと過ごされてきたエストニアでの暮らし。実はカイレさんには、PCを持ってきてください! …と、お願いをしていたのです。実際にウェブ上で電子サービスにアクセスしている様子を見せてほしくって。約束どおり、というか見すぎなくらい、見させていただきました!

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(PCにつながるカードリーダー。IDカードはさくっと挿すだけ。)

カバンから出してくれたのは、マウスのような形のカードリーダーと、IDカード。IDカードは15歳以上のエストニア国民に支給されているとのことです。カードリーダーのケーブルをPCにつないだら、IDカードを挿し込みます。

すると、あら不思議…IDカードを挿して、画面にキー(パスワード)を入力して、あっという間にマイページにログインできました。

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(お店や施設内では基本的にフリーWi-Fiが飛んでいるので、どこでも簡単にアクセスできるみたいです)

画面上部には、「My Data」「Services」「Topics」「Contacts」の4種のボタン。「Services」をクリックすると、ずらーっと並ぶ「Housing(住宅)」「Education and Science(教育と科学)」「Traffic(交通)」「Work and Employment Relations(仕事と雇用関係)」などの文字が…! すごい、とにかくたくさんのジャンルが並んでる。

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上田 カイレさん、何も隠さず見せてくれてますけど…大丈夫?

カイレさん うん、全部見てもいいよ(笑)。

上田 いやいやオープンすぎです〜! お言葉に甘えて、じっくり見させてください!

なんと、このマイページから、小学校から高校までの全ての成績が見れるそうです! 宿題のやりとりや保護者との連絡もこのページを通じてできていたとか。それについては、「親もキーを使ってアクセスして全てを見ることができるから、何も秘密にできない(笑)」とのことでした。のび太くんが0点のテストを隠すこともできなくなるんですね…。

他にも、これまで行ってきた学校、病院、医者の名前も見れるんですって。税金関係の手続きもできるし、銀行のウェブサイトにもカードを使って自分のアカウントにアクセスできる、らしい。エストニア、進みすぎ…!

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(IDカードでログインした後の画面。Work and Employment Relations(仕事と雇用関係)をクリックすると、年金の記録や労働の記録などへ飛ぶリンクが出てきました)

カイレさん 病院の情報やカルテの内容も自分のページに保存されます。いつもと違う医者による診断が必要な場合は、その医者が私の情報にアクセスして、見ることができるようになっていて。オンラインを使うと早く予約できるし、情報の共有が早く済むんです。銀行アカウントは別のカードでログインして、とても簡単にアクセスできる。銀行からの連絡はメールに自動転送してくれるようになってます。

上田 私も銀行口座を3つくらい持ってるけど、インターネットバンキングは全部別のカードなので管理が大変で…全て一枚でできるなんて、羨ましすぎます。IDカードを使ったサービスや、電子政府の仕組みについてはどう思いますか?

カイレさん とても便利だと思う。オンラインでほとんどのことができるから。銀行口座も家からできるし。全てが早いし。運転免許証やEU内パスポートの代わりにもなるので、若い人はIDカードだけ持っている人がほとんどです。EU以外の国に行く時にパスポートをつくりますね。高齢者で電子サービスが苦手な方は、警察署で相談することができます。IDカードを更新する時や、IDカードについてよく分からない時、パニックになった時に行くみたい。

なるほど〜。ホントに公的手続きが家でできるってことは、ラク便利だけじゃなくて、学校の成績や診断履歴などが自分の手元にあって、見たい時に見られるようになっているので、なんだか安心しますね〜。

カイレさんは日本に興味はあるけど、まだ行ったことがないとのこと。次は福岡で再会することを誓い、さよならしました。個人情報ぎりぎりのところまで見せてくださって、ありがとうございました!

 

次の行き先は、エストニアで出会った日本人大学生に教えてもらいました。

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齋藤 侑里子(さいとう ゆりこ)さん、筑波大学の4年生です。今年の2月から6月ごろまで、タリン大学に交換留学中。実は共通の知り合いも多くって、何より、ゆりこさんがとっっても気さくで面白くってオープンな方で(会ってものの数分で変なポーズを披露する仲に )すぐに緊張がほぐれました。ぎりぎりの英語でインタビューを乗り切ろうとしていた上田と一緒に、タリンをまわってもらいます。

◆日本発スタートアップに教えてもらった、ブロックチェーン本来の役割

まず訪れたのは、ゆりこさんに教えてもらって知った「blockhive(ブロックハイブ)」という会社。もともと5〜6年前からブロックチェーン関連の受託や日本企業の創業支援を行なっていたそうですが、日本の方々を中心に昨年4月にエストニアで起業されたそうです。普段はインタビューを受けないそうですが、なんと、特別に創業者のお一人である有村一照さんにお話を聞くことができました…!

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(blockhiveウェブサイトのトップページより抜粋。背景は世界遺産にもなっているタリン旧市街の町並み。左上のblokhiveのロゴマークは蜂の巣を表しているそうです)

上田 そもそもblockhiveさんって、どんなことをされている企業なんですか?

有村さん うちは5年前からブロックチェーン技術を活用して、国内外のクライアントに事業企画および受託開発をしてきました。blockhiveの「ブロック」はブロックチェーンを、「ハイブ」は蜂の巣・巣窟を意味しているんですが、いろいろなプロジェクト・パートナーがblockhiveのコミュニティに入ってきてもらうのを目指していて、blockhiveとしての生態系や、新しい経済圏を築きたいと考えています。

上田 なるほど〜。実は私、ブロックチェーンのことをよく理解できていないんですが、大学生にもわかるように説明していただいていいでしょうか? エストニアとブロックチェーンにはどんな関係があるんですか?

有村さん ブロックチェーンを一言で説明するのは難しいんですが、ブロックチェーンの中の重要な仕組みとして、「全ての取引を記録する」というものがあります。エストニアではe-Nation(イー・ネイション)といって、すべての行政サービスがブロックチェーンに近い技術で暗号化され管理されています。例えば日本だと、カルテは病院のもの。セカンドオピニオンをするとき、カルテをくださいと言っても、「あげない」と言われるケースもあるそうですが、医療情報という極めて個人的な情報なのに、その所有者が病院というのはおかしな話ですよね。エストニアでは、個人の医療情報は全て国民が持つIDカードに記録されます。あなたの医療情報はあなたのもので、医者はあなたの許可を得て初めて過去の病歴や通院歴がわかるんです。

上田 医療情報の扱われ方が、まったく違うんですね。

有村さん ヨーロッパでは平成30(2018)年5月25日からGDPR (General Data Protection Regulation)という個人情報保護に関する法律が施行されたので、「個人の情報は個人に帰属する」という考えがより広く浸透していくでしょう。これを安全に管理するために、ブロックチェーン技術が活用されているんです。

上田 へええ。日本でブロックチェーン技術がもっと活用されるようになったら、生活がどんな風に変わるんですか?

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有村さん もし仮に、全ての病院が完全に電子カルテ化し、ブロックチェーンの技術を使って分散管理ができたら、例えば生命保険料は下がるでしょうね。ブロックチェーンに記載される医療情報をもとに、より精緻な保険を組めるはずなので。あとは、街中で僕が急に倒れたら、救急車で注射をするかどうか判断が必要ですよね。でも僕はアレルギーを持ってるかもしれない。そんな時、医者が僕の医療記録を全て閲覧できたら、より適格な医療サービスを提供できます。

上田 救命士さんが有村さんの医療情報を確認して、その場で判断して緊急措置ができる…ってわけですね。ブロックチェーンがインフラになった未来、すごい…!

また、有村さんからはAgrello(アグレロ)というエストニアのスタートアップも紹介していただきました。

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(手前がAgrelloのCEO。ITやテクノロジーを学べるエストニアの環境を求めて世界中から留学生が集う、タリン工科大学の卒業生だそうです。)

Agrelloは、ブロックチェーンを利用してウェブ上で電子サインができるサービスを提供するスタートアップ。日本だとハンコの押印や直筆のサインが必要になりますが、エストニアではこのサービスを使って銀行の手続きなどがオンライン上でできてしまうんだとか。そしてつい最近、Agrelloとblockhiveは共同でジョイントベンチャーを立ち上げたばかりだそうです。これからブロックチェーンを使ってどんな新たな仕組みが生まれていくのか、わくわくします!

カイレさんに見せてもらったIDカードの仕組みは、このブロックチェーンに支えられていたんですね〜。とっても分かりやすくて面白いお話が聞けて、初めて腑に落ちました。ブロックチェーンって、「個人情報を個人に返す」ためのものだったとは…! インターネットで何でも検索して買い物できる今、その履歴や入力した情報などの行き先は、見えない部分が多いですよね。自分の個人情報はどこで管理され、守られているのか…不安になる時もあります。それがブロックチェーンの仕組みを使うと自分の手元に返ってくる、ということは分かったけど、じゃあブロックチェーンを使えば本当に安全なの? ということも、同時に気になりますよね。これから注目してみたい!

そして、ゆりこさんはこの訪問をきっかけにblockhiveでPR・マーケティングのインターンを始められました。blockhiveのウェブサイトからよく発信されているので、ぜひ見てみてくださいね!

 

【関連リンク】
blockhiveウェブサイト https://blockhive.ee/

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