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【女子大生スタートアップ取材ブログvol.9】コワーキングオフィスがおしゃれ!電子国家エストニアのリアルな暮らし!~後編~

こんにちは、上田りさこです。前回(http://hash.city.fukuoka.lg.jp/fgn/archives/8)から、福岡市ともつながりがあるスタートアップ国家、エストニアを訪れたレポートにチャレンジしています。エストニア国民しか見られない、電子サービスのページと、それを実現するブロックチェーンの本質のお話、とっても面白かった…! 次は、コワーキングスペースで見たエストニア人の働き方について、そしてエストニアで暮らす2人の日本人が見ている景色について、聞いてきましたよ。

◆子どももペットも連れてのびのびと仕事ができる、コワーキングスペース「Spring Hub」

福岡のコワーキングスペースと言えば、市街地ど真ん中にあるFukuoka Growth Nextもその一つ。一室を借りてオフィスとして使う会社もあれば、Wi-Fiが整った環境でデスクを借りて、好きな席で仕事をされる個人事業主の方にも使われています。まったく違う業種や専門の人が集まって同じ空間で仕事をするって、面白いですよね。

エストニアにも、いくつかのコワーキングスペースがありました。その中で、事前にウェブサイトで調べて「お、おしゃれ…!」と感動した、Spring Hub(スプリング・ハブ)に行ってみました!

コワーキングスペース「Spring Hub」の入り口。赤く縁どられたドアが特徴です。
エストニアの首都・タリン市内のとあるバス停を降りて5分くらい歩いた施設の2階にありました。

Spring Hubスタッフのマギさん
案内してくださったのは、黒いTシャツワンピースに赤髪のお団子が似合う、ラフで気さくなSpring Hubスタッフのマギさん。たっぷりと案内してもらいました。

Spring hubの内観。白い壁に囲まれた空間に,植物の緑が映えます。
平成28(2016)年11月にできた「Spring Hub」は、緑と白と植物が印象的で、名前にもあるように春(スプリング)の空気の気持ちよさが漂っているような空間。耳をすますと、オフィススペースでは小鳥のさえずりのBGMが静かに流れていて、まるで開放的な森の中にいるみたい。

オフィススペースの横には寝ころべるほどの広い休憩スペースが!やわらかそうな抱きつけるクッションも用意されています。
オフィススペースの横にある休憩スペースがこちら。広い! そして、不思議な形の気持ちよさそうなクッション…!

クッションに寝転んでみる私。
ばふっ。見てるだけじゃガマンできなくて、寝転んでみました。これは、寝れる〜。暮らせる〜。

スタッフであるマギさんの名刺には、「コミュニティマネージャー」と書かれていました。日本ではあまり聞かない肩書きですが、SNSグループで利用者メンバーとコミュニケーションをとったり、ウィークリーレターを出したり、イベントを定期的に企画したりしているそうです。毎月1回は夜にビールやワインを飲みながら映画を観たり音楽を楽しんだり、スープを作ってふるまうこともあるとか! コワーキングスペースって、そんなのもアリなんだ〜。楽しそう!

スタッフのマギさんが男の子と遊ぶ様子。
いちばん驚いたのが、「子ども・ペットの同伴ウェルカム!」なコワーキングスペースであったこと。室内にあった自動販売機には、飲み物ではなく、ペットフードがずらっと並んでいたんです。そして、マギさんが利用者のお子さんと遊んでいるこんな光景も。子どももペットも気軽に連れて来られると、同じ空間で安心して働けますよね〜。いいなぁ。働き方に開放的で、ラフな雰囲気が似合うコワーキングスペースでした。

*リンク Spring Hub ウェブサイトURL:https://www.springhub.org/

◆遊び心あるコワーキングスペース「LIFT99」

コワーキングスペース「LIFT99」。黄色い看板は目立ちますね。
もうひとつ訪れたのは、LIFT99(リフトナインティーナイン)というコワーキングスペース。ここは福岡での予習(http://hash.city.fukuoka.lg.jp/fgn/archives/7)にて、mumu(ムームー)さんが教えてくれたテレシキビという場所の一施設の中にありましたよ。

これはちょっと反省なんですが…実は私、アポイントのメールを送る先を間違えちゃって、予約をしていたつもりが、突然の訪問になってしまったんです(ひえ〜ごめんなさい!)。でも、いきなりの訪問(しかも夕方過ぎの営業後)だったにもかかわらず、スタッフのエリーナさんが快く案内してくださいました。優しすぎる世界、ありがとうございます…!

LIFT99スタッフのエリーナさん。
エリーナさんも、黒の半袖Tシャツというラフな格好。いやいや、外はマイナス26°の超極寒なんですよ…! エストニアのコワーキングスペースのスタッフってこんなにラフに働いてるんだな〜というのが、新しい気づきです。

この写真をよく見てもらうと分かるんですが、実はイスがブランコになってるんです。ゆらゆら揺れながら会議をしたり、アイデアを出したりするんですって。遊び心を開放しながらアイデア出しができるって、いいですよね〜! 私だったらどこまで漕げるか、こっそり遊びだしそうだ…。

LIFT99オフィススペースの壁にはオバマ前大統領の顔写真がプリントされていました。
(オバマ前大統領の顔写真がプリントされた壁。)

各部屋の壁には、10名くらいの著名な作家や政治家、ミュージシャンたちの顔写真と言葉がプリントされていました。これらの人びとはすべて、エストニアにゆかりある方々なんだとか。人口の少ない小国だけど世界に注目されているのが分かりますね。そしてLIFT99は日本、福岡からの視察も多いらしく、エリーナさんも「FUKUOKA」を知ってくださっていました。ちょっと嬉しい! 

実は、2つのコワーキングスペースに、同じ質問をしていました。

「ここのコワーキングスペースの特徴は何ですか?」

実は、両方とも「コミュニティ」と答えられたんです。エストニアのコワーキングスペースは、仕事の環境や集中、効率…というよりも、コミュニティに力を入れている、ということなんですね。子どもやペットを連れてきてOKというところも、色々な人が参加しやすい工夫ですよね。

◆タリンで日本料理店を展開する高倉さんに聞く、エストニアと福岡の共通点

エストニアに着き、歩いてて感じたのは、「日本人、むしろアジア人がほとんどいない…!」ということ。日本ではエストニアの名前をよく聞いていたけど、実際に暮らしている日本人は100人程度だとか。そんなわずかな日本人の中で、なんと福岡出身の方に会えちゃいました…! 同行してくれている留学中の大学生、ゆりこさんに紹介していただき、福岡つながりということもあって「絶対に会いたい!」と伝え、お時間いただいてきました。

エストニアについて語る高倉慎太郎さん。
この訪問の約1ヶ月前までタリンで日本料理屋を営まれていた、高倉慎太郎さんです。今は休業して次の構想を計画・準備中。高倉さんは福岡大学を卒業された後、福岡でアトモスダイニング株式会社に就職し、海外出店を経験。その後、独立して飲食店を経営されながら「自分でも海外でお店をやりたい」と考えていたとき、たまたまエストニアを視察するチャンスが巡ってきたと。エストニア行きは偶然だったけれど、料理店を展開しながら今も住まれているとのことです。

上田 高倉さんのお店、さっきネットで調べてみたらすごい高評価で驚きました。どんなお店だったんですか?

高倉さん お店の名前が「結(ゆい)」っていうんですけど。福岡を中心に九州の食文化をタリン・エストニアからヨーロッパへ繋げ、結んでいきたいってコンセプトで、「結」という名前で経営してました。

上田 日本の、ではなく福岡の食文化にフォーカスしている理由ってありますか?

高倉さん 僕たちは博多、福岡のエッセンスを受けているんで、やっぱり母体である福岡をこの国で伝えたいと思ったんです。福岡も今スタートアップが活発に行われてて、エストニアとの共通項もたくさんあって。だから親しみやすいって思ってもらえたらなと。あとは単純に、味の好みがエストニア人に合うなって思って。

上田 味の好みも似てるんですか。確かに海も山も自然も豊かで空港もすぐで、福岡とは地形が似てるな〜って思います。そういえば昨日、ここで食べたサーモンがおいしかったんですよ!

高倉さん ノルウェー産が多いけど、実はエストニアでもサーモンが穫れるんです。川魚がおいしい。エストニア人は日本人ほど味覚が鋭くはないかもしれないけど、味覚って、苦味・うま味・塩味・甘味・酸味の五角形のうち「うま味」以外は結構似てるなって思いますね。地形が似ているのが関係しているかも。

高倉さんの話を聞く私。
上田 味覚と地形の関係って、面白いなぁ。あるかもしれないですね。高倉さんはお店の休業を経て、これからどういう事業にしたいと考えているんですか?

高倉さん もうちょっと人の生活スタイルに近づけるために、テイクアウトしやすいものやデリバリーできるものにフォーカスして、お弁当屋のスタイルでやりたいと思ってます。店内の余ったスペースには、福岡からの商品を置いてみたり、物販もやったり。活発な学生さんとか活動したい人のミートアップに使える、インフォメーションセンターの役割もできたらいいなと思います。

上田 日本人にとってのハブみたいな場所にするんですか。面白いですね!

高倉さん 価格帯は安くして、外から見てにぎわいが出るような場所にしたいです。

今後の構想を語る高倉さん。日本人とエストニアが繋がれる場所,とても楽しみです。
上田 日本人でエストニアと繋がりたい、って思ってる人は、多いと思います。楽しみですね。逆にエストニアから日本に興味あるな、って人はどれくらいいるんですか…?

高倉さん 日本に留学する前に日本人としゃべっておきたいって人は結構いて、頻繁にイベントしたいって声も聞きます。けど、ほんとに場所がないんです。そういう人たちのためにもミートアップイベントをやりたい。どんどん使ってもらって、そこから東京とか大阪だけじゃなく福岡も知ってもらったら、また一つ新しい選択肢になるじゃないですか。その土台をここであっためて作っておきたい。

上田 いいですね。エストニアから日本に興味ある人が結構いるっていうのは、初めて知りました。

ゆりこさん 結構いますよ。タリン大学にも日本語学科があって、面白そうな授業をしてました。

高倉さん うちで働くスタッフにはエストニア人がいないから、スタッフのコミュニティを作るためでもあります。僕はコミュニティを作るのが好きで。人は自分が生きていきやすいコミュニティを選ぶ権利があると思う。日本人としてここに住まわせてもらって、今ここで入れるコミュニティってそんなに多くないというか、実際ないんですよ。だから僕が作ろうと思って。そしてもっと、若い人がいっぱい来たほうがいいと思うんですよ。

ゆりこさん そう思います。

上田 注目されている割には、意外と日本人もアジア人も全然会わないし、まだまだ少ないんだなぁって感じますね。

高倉さんと私。色々と話してくれてあっという間に時間が過ぎちゃいました。
エストニアに対する印象を赤裸々に話してくださった高倉さん。私が印象的だったのは、「人は自分が生きていきやすいコミュニティを選ぶ権利があって、でもここにはないから、僕が作る」という言葉。料理店にとどまらず、日本人というエストニアの中でのマイノリティとなっている人びとの居場所をつくり出そうとされていること、その新しいチャレンジにとてもワクワクしました。応援しています!

◆学生から見た、エストニアのスタートアップ事情

短くて濃厚だったエストニアの約2日間もいよいよ終わりです。締めくくりは、安くて美味しいゆりこさんのおすすめレストラン、F hoone(エフフォーネ、エストニア語で「Fの家」という意味)へ。エストニアではめずらしい日本人留学生で、スタートアップに興味がばりばりで、活発なゆりこさん。留学開始後1ヶ月で、なんと10以上のスタートアップ系イベントに参加されたそうです! すごい行動力…。2日間ずっと一緒にいたので、急に8,000km(エストニアと日本間)の距離ができてしまうのは寂しい。最後にお話を聞きました。

上田 ゆりこさん、留学して実際に暮らして、色々なイベントに行ってみて、学生から見たエストニアのスタートアップ事情ってどんな感じですか?

ゆりこさん 人口が少ないエストニアは、人と人の関係度が密で、それゆえの「巻き込み力」が半端ないな!って思います。「STARTER TECH(スターター・テック)」っていう学生のための面白いプログラムがあって。これはエストニア全土の大学を中心に、STARTUP ESTONIA(スタートアップ・エストニア)という政府主導機関、起業家やスタートアップ企業、コワーキングスペースをたくさん巻き込んでみんなで作ってます。最終的には、学生がLatitude59°(エストニア最大のスタートアップイベント)でピッチして投資までしてもらっちゃおうぜ!っていう3ヶ月に及ぶプログラムです。あらゆるフィールドから専門性を持って集まった学生と、エストニアのITビジネスの最先端にいる社会人達のサポート、あらゆるエストニアのリソースを使いながらアウトプットまで形にしていく…ここまでできるのって、エストニアが国家としてスタートアップや起業に力を入れているのもあるけど、小さい国の良さとフレキシビリティを生かしたプログラムですよね。

上田 人口が少ないゆえの巻き込み力! なるほどな〜。私あんまり詳しくないんですけど、学生がピッチって、自分の事業を持ってる人だけ…? これから始めたいって人もいるんですか?

ゆりこさん 両方。もう起業してる人もいればゼロから作っていく人もいるし。現行のビジネスプランに改善を加えて投資のチャンスを狙うとか、今はフェーズ1の段階だけどこれから拡大するから投資してください!とか。様々でしたね。

上田 それに参加したい学生は、簡単に参加できるんですか?

ゆりこさん そう!学生の参加費はタダ!有名な起業家や投資家から直接レクチャーしてもらえる講座がたくさん開講されるし、メンターとして彼らががっつり入ってくれるし、しかも豪華なケータリングも出るし、です(笑)IT業界に多くの人材を輩出するタリン工科大学だけではなくて、文系大学のタリン大学や芸術系の大学、ここから2時間かかるタルトゥ大学からも学生は来ているし…大学を超えて専門性を持ち寄る機会って貴重ですよね。日本でここまであらゆる分野の人を巻き込んで行うのはなかなか難しいと思うけど、できたら面白そう!

上田 いいな〜。大学と行政が積極的に…ってなると、日本だと壁が多いイメージですね。でも、福岡市くらいの規模だとできそうな気もする! アート系が強い九産大や九大の芸術工学部もあるし、技術系が強い九大の理系とかもあるし。

ゆりこさん 今福岡はスタートアップシティとしてすごく力入れてますもんね!その土地とカルチャーがあれば、なんだかできそうー!

エストニアのスタートアップ事情を話すゆりこさん。
上田 ゆりこさんと話してて、気になったことがあって。エストニアに来て、卒業後の進路がゆらいだって…?

ゆりこさん うーん、実際色々考えさせられます(笑)。私はとあるIT企業から内定をいただいているんですが…エストニアで出会った人達からはいい意味で影響を受けますね。日本のような就職活動もないこの土地で、彼らの持っているモチベーションや将来への意識、人との関わり方からかなり刺激をもらいます。エストニア人全員という意味ではなく、スタートアップの世界で出会う人たちが特に。

でも、日本とエストニアでは環境も文化も人が違うから、今見ている世界と全く同じことができるわけじゃないとは分かっています。日本にいた時は、人からの目を気にしていわゆる「いい会社」に入ることに憧れを抱いていたけど、そういう古臭い考えみたいなものはぶち壊されました…(笑)

上田 エストニアで出会った人や環境が、これからの生き方に影響しそうなんですね。

ゆりこさん そうですね。日本の就職活動期間である1〜6月の半年を丸々エストニアで暮らすというちょっとイエローカードな選択は、人生レベルで価値のある時間をもたらしてくれています!

ゆりこさんと私のツーショット。
ぎゅうぎゅうに予定を詰めた2日間のエストニア取材&訪問を終えて、いまは無事、日本に帰国しました。

行ってみる前は、とにかく「電子国家」「バーチャル国家」なイメージが強かったエストニア。メディアではこういう言葉で取り上げられがちだけど、その解像度を高めてよく見聞きしてみると、コミュニティに働き方の価値を置く環境や、福岡に似た料理や風土、人がいて、とっても暮らしやすい。一方で、ブロックチェーンによる個人情報との付き合い方の変化など…これから変わりゆく世界の過渡期の瞬間を目にした、という感覚もありました。

エストニアの10年後、この光景はまるっと変わっているんだろうな、と思います。もしかしたら今回見かけなかった日本人やアジア人が増えて、さらに多様化が進んでいるかもしれないし、ITとインフラのあり方ももっと変容しているかもしれない。そうなる前の、この瞬間のエストニアを味わえたことはラッキーだったかも。

エストニアとつながりがあって、ちょっと似ているとも言える福岡の10年後は、どうなっているんでしょうか?

雪道を歩くゆりこさんと私。
コーディネート&サポートしてくれたゆりこさん、そして今回の取材を快く受け入れてくれたエストニアのみなさん、とっても寒い中、ありがとうございました!

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