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2年連続バリスタ日本チャンピオンが語る、 コーヒーとクリエイティブ都市・福岡とのホットな関係

質の高いコーヒーショップが多く存在し、独自の存在感を持つ福岡のコーヒーシーン。昨今のシーンを牽引するうちの一人が、12年前に出身地の名古屋から福岡に移住し、現在市内に3店舗を展開するREC COFFEEの共同代表、岩瀬由和さんです。

岩瀬さんは、平成26(2014)年から2年連続でバリスタ日本一を決める「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ (JBC)」を制した実力者。総合力で勝負することができる食品メーカーの社員バリスタではなく、独立系コーヒーショップの経営者でもある“オーナーバリスタ”が2年連続でチャンピオンシップに輝くのは、異例なことといいます。

そして岩瀬さんは、日本からはJBCを制したものだけが出場を許される「ワールド バリスタ チャンピオンシップ(WBC)」に今年も出場。昨年のWBCでは惜しくも7位入賞となりましたが、今年こそはと優勝の期待がかかっています。

6月22日にアイルランド・ダブリンにて開催される今年のWBC。世界大会を目前に控えた岩瀬さんに、大会への意気込みからコーヒーにかける思いまでを聞いてきました。

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--今日は大会の話だけでなく、岩瀬さんの歩んできたコーヒー人生について伺いたいと思います。まずは、岩瀬さんとコーヒーとの出会いから教えてもらえますか。

岩瀬 はい。中学生の頃、兄が留学していたカナダに行った時のことです。兄の学校の帰りを待つ場所として指定されたのが、当時はまだ日本に展開していなかったスターバックスコーヒー。英語も喋れず、ひとり不安な気持ちだった僕を、店員さんが笑顔で迎え入れてくれました。ロゴはカッコいいし、ステッカーももらって、すっかりスタバのファンになっちゃって、シアトルの本店にも行きました。日本に上陸してからは、わざわざ地元・名古屋から東京に出向いて、マグカップを買ったりしていました。ただその頃は、コーヒーやカフェが持つ世界観やファッション観に憧れていただけで、味に対してこだわっていたわけではありませんね。

--では、コーヒーのおいしさに目覚めたのはいつ頃なんでしょう?

岩瀬 福岡に住むようになって、manu coffeeでアルバイトを始めた頃ですね。manu coffeeの代表・西岡総伸さんから、質の高いコーヒーとは何かを学んだんです。当時、僕は24歳の若造でしたが、そんな若さでも最高品質の豆を扱えて、一杯のコーヒーを通じてお客さんにおいしさや感動を伝えることができる、そこにすごく魅せられて夢中になっていきました。ここに、自分の情熱を注ぎ込めるものがあると思ったんです。

--いい出会いですね。福岡に来られたのは、何か理由があったんですか?

岩瀬 大学生の頃に、REC COFFEEの共同経営者・北添修と出会い、意気投合して、ふたりで何か面白いことをやろうと計画していたんです。それで、日本全国を見て回っているうちに、福岡がとても気に入って。福岡は建物が低く、路面店が多い印象でした。福岡の人は、大型の商業施設で買い物をするのではなく、お気に入りの路面店に行って、買い物を楽しんでいる。独自の文化があって、自分のスタイルを持っている、感度の高い人が多いように感じたんです。ファッション誌を見ても、地方のファッションスナップのコーナーでいつも目立っているのは福岡だったりして。この街なら何か面白いことができそうだという予感があって、移住することにしたんです。

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--当時の福岡のカフェシーンは、どんな雰囲気だったんでしょうか。

岩瀬 当時の福岡には、エスプレッソをベースに使う、いわゆるシアトル系のコーヒーショップはスタバぐらいしかありませんでした。特に、エスプレッソマシンを独自に持っている独立系の店はほとんどなく、manu coffeeはその先駆的存在でした。スペシャルティコーヒーという言葉が確立してまだ数年で、それを若い世代に発信して店舗を拡大していたmanu coffeeは、とてもカッコよく見えましたね。一方、シアトル系とは異なる、純喫茶のコーヒー店はすでに名店がいくつもあり、それぞれ個性があって、人気がありました。伝統ある純喫茶の文化と、アメリカ西海岸から新しく入ってきたシアトル系文化が、これから福岡の街で融合して多様化していくだろう。そうすれば福岡のコーヒーシーンはさらに大きく発展するし、そこに自分の価値観をうまく乗せられたら、きっと成功できるだろう、と感じたんです。

--福岡の街に、シアトル系コーヒーが受け入れられる素地を感じたということですか?

岩瀬 ええ、そうです。例えばシアトルは、マイクロソフトやアマゾン、ボーイングといった世界のクリエイティブ企業が集まっていますが、そのこととシアトル系コーヒーの隆盛は、強く関連していると思うんですよ。高いクリエイティビティを持つ人たちは、目の前にある一杯のコーヒーにも刺激を求めているし、品質の違いをわかる人が多い。コーヒーには質の違いを見極める楽しさがあるし、そのために勉強する人もいます。質の高いカフェには、感度の高い人が集まってくるんですよね。福岡はもともと感度の高い人や自分のスタイルを持っている人が多くて、かつここ数年は、クリエイティブ都市として確実に存在感を高めてきています。だから、おいしいコーヒーが求められているし、これからもっとそうなっていくでしょう。

--興味深いお話です。では岩瀬さんが考えるおいしいコーヒーとは、どんなコーヒーなんでしょう?

岩瀬 僕が考えるおいしいコーヒーとはつまり、「お客さんがおいしいと思うコーヒー」です。そのためにすべきことは、豆の品質を極力落とさずに、そのままお客さんに伝えること。仮に最良の状態の豆が手に入ったとして、その味を100とすると、焙煎をし、抽出し、お客さんに提供するまでの間に、その値は100から90、90から80へと、どんどん下がっていきます。決して上がることはないんです。そして、一番大きく下がる可能性があるのが最終提供者、つまりバリスタが手を加える時です。淹れる時の解釈の違いや抽出のブレなどで、豆本来の品質が損なわれてしまうんです。

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--なるほど。

岩瀬 だから、優秀なバリスタとは、自分の痕跡を残さないバリスタなんです。余計な手を加えず、豆そのものの味わいをなるべく100に近い状態でカップに注ぎ込む。それがバリスタの仕事です。だからうちの店では、マニュアルがありません。豆は何グラム、抽出に何秒かけるといったマニュアルを作れば、味のブレは少なくなるんですが、その日の豆の状態や気温といった変動する要素に対応できなくなります。100を目指すためには、自分で考えて判断する必要がある、だからマニュアル化できないんです。そこに、バリスタの仕事の尽きない魅力がありますね。

--味へのこだわり、よくわかりました。そして、REC COFFEEの魅力は、こうした味への深いこだわりを持ちながら、誰でも気軽に入れる親しみやすさがある点だと思います。

岩瀬 ありがとうございます。間口を広くし、老若男女問わず気軽に入れる店にしたいという思いは、当初からありました。バリスタという仕事には、徹底的においしさを追求する職人的な一面と、オーダーからお会計までスムーズに対応する接客・サービス業の一面が、同時にあるんです。だから、一杯のコーヒーを通じてコミュニケーションが生まれるし、感動を伝えることができます。WBCも、味だけでなく、コミュニケーションスタイルが審査の対象になるんです。この大会の主旨は、バリスタ世界一を決めるというだけでなく、コーヒーの文化を広く世の中に伝えていく伝道師を増やしていくことにもあるので。

--そうなんですね。では最後に、WBCへの意気込みを聞かせてください。

岩瀬 今年は優勝します! 2年連続で日本代表として出場させてもらい、数々のサポートを受けてきたことに応えるためにも、結果を持ち帰りたいですね。福岡の街で、コーヒーによって自分を育ててもらったことへのお礼を、まだきちんとできていないという気持ちがずっと残っているんです。大会から戻ったら、お店の運営とはまた別に、個人の岩瀬として、福岡の街や日本のコーヒー業界に何かしら自分なりに還元できる活動を始めたいと考えています。

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【プロフィール】
岩瀬由和(いわせ・よしかず)さん
昭和56(1981)年愛知県生まれ。REC COLLECTIVE 株式会社代表取締役。「manu coffee」勤務を経て、平成20(2008)年に共同経営者北添修氏と「REC COFFEE」を開店。以後、国内外の競技会へ出場し、入賞を重ねる。平成26(2014)年より、2年連続でジャパン バリスタ チャンピオンシップ優勝。日本代表としてワールド バリスタ チャンピオンシップに出場。現在も競技者として活躍しながら、大会の審査員、セミナー開催など、社内外問わず後進の育成に力を入れており、バリスタ業界への貢献度が高く評価されている。REC COFFEEとしては、薬院駅前、県庁東店のほか、平成28(2016)年4月に博多駅のマルイに新店舗をオープンさせた。

 

【関連情報】
Click Coffee Works主催
「ワールド バリスタ チャンピオンシップ」パブリックビューイング
6月22日(水)21:00〜 at REC COFFEE県庁東店 参加費無料
ワールド バリスタ チャンピオンシップ2016における岩瀬由和さんの競技の模様を、アイルランド・ダブリンよりライブ配信! 福岡が誇るトップバリスタの、渾身のプレゼンテーションを一緒に目撃しましょう!!
http://clickcoffeeworks.tumblr.com/post/145453901723/

 

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