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福岡発のベンチャー投資ファンド「F Ventures」両角氏が描く スタートアップ都市・福岡の未来予想図

平成28(2016)年4月に設立された「F Ventures」は、元サムライインキュベートの両角将太(もろずみ・しょうた)さんが立ち上げた、福岡発のベンチャー向け投資ファンド。同社は日本経済新聞や西日本新聞ほか、各種WEBメディアにも取り上げられ、福岡のスタートアップシーンを活性化させる“起爆剤”として、注目されています。

東京と福岡を往復しながら活動を続ける両角さんに、スタートアップ都市としての福岡の可能性を、お聞きしました。

 

――両角さんは、早稲田大学を卒業後、新卒でベンチャーキャピタルの世界に入ったそうですね。まずは当時から今までの、東京のスタートアップシーンの状況について、教えてもらえますでしょうか。

両角 私がサムライインキュベートにジョインしたのは平成23(2011)年秋のことです。これより以前は、東京でもスタートアップシーンというのは、ほとんど存在していませんでした。ちょうどあの頃から、サムライインキュベートのような、起業したての「シード期」の会社に投資を行い育てていくベンチャーキャピタル(VC)が増えてきて、スタートアップシーンの萌芽が見え始めていました。平成23(2011)年にはKDDIが、翌年あたりからはNTT docomoやフジテレビ、TBSなどの大手企業が自社系列のファンドや投資子会社を持つようになり、シーンが拡大していきました。

――なぜ大手企業がスタートアップシーンに注目し始めたのでしょうか?

両角 これは私の見立てですが、既存のビジネスモデルに限界を感じ始めた企業が、新たなイノベーションを必要としたり、新規事業開発を模索し、ITを活用したスタートアップの活力を取り込みたかったのではないでしょうか。具体的には、平成24(2012)年に私がコワーキングスペース「Samurai Startup Island(SSI)」のマネージャーに就任し、年間約200回のイベントを開催していた頃、徐々に大企業の経営企画や新規事業担当の方々が参加するようになり、交流が深まっていきました。私が大企業とのアライアンス力を自分の強みにできているのも、この頃に知り合い、広がっていった人間関係によるところが大きいです。

――なるほど。

両角 また当時はスマホの普及・浸透期でしたから、スマホに特化したサービスで勝負に出たスタートアップは、急成長していきました。特に、アドテクノロジー分野に注力したスタートアップは成功しましたね。この頃には、新しいアイデアを軸にスタートアップを軌道に乗せ、M&Aによって得た売却益から新たなサービスを立ち上げたり、投資側に回るというサイクルが、成功のモデルとして認知されてきました。これにより、“スタートアップエコシステム”(スタートアップを取り巻く環境)が徐々に形成されていったんだと思います。

――つまり東京のスタートアップエコシステムが形成されていく中で、活動を続けられていたわけですね。そんな両角さんが、なぜ福岡でベンチャー投資ファンドを立ち上げられたのでしょうか?

両角 まずは、高校まで生まれ育った故郷が福岡ですから、地元の発展に貢献したいという思いがありました。でも、それだけではありません。福岡を含む九州全域は豊かな農業地帯であり、第一次産業分野はこれから大きなITイノベーションが起こる可能性があると考えています。

――農業とITですか?

両角 ええ。例えば、私がよく訪れていたイスラエルは、国土の60%が乾燥地帯で、雨量が極端に少なく、農耕に適した土地ではありません。しかし、テクノロジーの力で効率的な農産物の生産を可能にし、食料自給率は97%を誇っています。イノベーションは、課題が大きい地域ほど生まれやすいということです。

――そうなんですね。

両角 それに福岡は国家戦略特区に指定されて以来、さまざまな規制緩和策によって、いま日本で一番新しいことにチャレンジできる環境が整った都市だと思います。サムライインキュベート時代に東京のスタートアップシーンの盛り上げと発展に貢献できたことや、東京のファンドと築いてきた信頼関係を、福岡のシーンに活用し、福岡独自のエコシステムを作っていきたいと考えています。

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――具体的にどんな活動をしていくんですか?

両角 これから約1年をかけて、5億円規模目標のファンドを組成していきますが、その中で、福岡やアジアを拠点にしているシード期のスタートアップ企業に対し、500万〜1,500万円程度の投資をしていくのが私たちの活動です。VCにはお金だけ出すケースと、経営にも積極的に参画するケースがありますが、私たちは後者寄りです。営業同行や人脈提供、広報やイベント支援など、ヒト・モノ・カネ・ネットワークといった経営資源を複合的に提供し、起業家にはクリエイティブ活動に集中してもらえるようにと考えています。投資先企業とは、毎週ミーティングも行っています。また、PR TIMESやQREATOR AGENTの佐藤詳悟さん、福岡出身の起業家・家入一真さんが経営するCAMPFIREなどのマーケティングやプロモーションが得意な企業と連携し、投資するスタートアップの発信力・集客力を高めていきます。

――すでに動き始めているんですね。

両角 ええ。また、私たちVC自体のマネタイズ方法も変えていきたいと考えています。VCの場合、年間売上の2〜3%の管理報酬と、売却や株式公開時の成果報酬が主な収入源ですが、規模の小さいVCの場合、それでは資本力に乏しくなり、支援体制としても十分ではありません。ですから、資本力のある大手企業と協業することで、VC自体の運営資金を確保する方法を、これから確立していきたいと考えています。

――現状で福岡と東京を比較した場合、どちらの方がスタートアップにとってメリットがあるとお考えですか?

両角 現状では、スタートアップエコシステム全体が整っている東京の方が、まだアドバンテージはあると思います。しかし、逆に言えば、東京は生活が便利になりすぎて、解決すべき課題が見えにくくなっており、斬新なイノベーションが起きにくくなっているとも言えるかもしれません。福岡は生活コストが安いですし、私たちが同じ500万円を投資するとしても、東京と福岡では大きく価値が変わってきます。行政の支援を利用し、海外の事業会社とも繋がる独自のシーンが福岡にできてくれば、“スタートアップなら福岡にいた方が有利”という環境もつくれるでしょう。

――確かにそうですね。

両角 それから、熊本地震の発生により、被災地のみならず九州は大きな打撃を受けました。私自身も、育ちは福岡ですが、生誕の地は熊本なんです。当社では、被災地の住民に向けてオンラインプログラミングスクールのコンテンツの、無償提供を始めました。被災地から、ITを利用して立ち上がってくる新たな力を応援していきたいですし、そこから成長する企業もきっと出てくると思います。

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――では、福岡や九州の現状を踏まえた上で、F Venturesとしての今後の取り組みを教えてください。

両角 現状は、まだまだ投資家も起業家も少ないのが課題です。まずは投資家側、支援側を増やしていく活動として、今後はアジアを中心とした海外の事業会社との連携を強めていきたいと思います。一方、起業家を増やしていく取り組みとしては、さまざまな民間企業と積極的にパートナーシップを組み、エコシステム整備に務めます。TECH::CAMP、WebCamp、ジーズアカデミーなどのプログラミングスクールと協力して、エンジニアの裾野を広げていくようIT人材教育を推進したり、IBMさんと連携してハッカソンイベントなどを開催していこうと考えています。それから、成功者を東京から呼び、成功のノウハウをシェアするような機会を設けていきたいと思います。気軽に話せる、身近な人の中に成功者が出てくることが、「自分でもやってみよう」という起業家を増やすきっかけになると思いますから。福岡市と私たちVC、さらに地元の企業が連携して、大きなうねりを作り出していければと思っています。

 

【プロフィール】
両角 将太(もろずみ・しょうた)
昭和63(1988)年、福岡生まれ。F Ventures LLP 代表パートナー。福岡大学附属大濠高校を経て、平成23(2011)年に早稲田大学政治経済学部を卒業。メディア運営がきっかけでサムライインキュベートに大学生インターンとして参画、その後正社員として入社。平成24(2012)年、コワーキングスペースSamurai Startup Island(SSI)のマネージャーに就任し、管理人として、SSIの管理やイベント運営、広報としてプレスリリースやメディアとの連携、投資先の広報支援を担った。また、「堀江貴文サロン」の立ち上げに寄与。平成27(2015)年、社内起業家として、アクセラレーター事業を立ち上げ、サムライにおける投資以外の周辺事業を築き上げた。平成28(2016)年、サムライインキュベートを卒業し、福岡を拠点としたベンチャーキャピタルF Venturesを設立。

【関連リンク】
F Ventures
https://f-ventures.vc/



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