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目標は「在宅で月収30万円」  ママグロースハッカーズに見る、福岡発の女性活躍の新しい可能性

政府が経済成長戦略の一環として掲げている女性活躍の推進。子育て中の女性でも働くことができる社会の実現は、日本全体の課題でもありますが、それはここ福岡でも同じこと。

20代〜30代前半の人口比率は男性よりも女性が多く、出生率も全国2位(平成26年度厚生労働省人口動態統計より/21大都市比較)を誇る福岡市ですが、その一方で、出産・子育てを理由に、働きたくても働けない女性は約15,000人に上ると言われ、市の大きな課題となっています。

そんな中、NHKやFBS福岡放送、西日本新聞社など、地元メディアにこぞって取り上げられているのが、「ママグロースハッカーズ」。企業やサービスの成長促進を手がける福岡のママさんたちの組織で、支援を名乗り出た企業の株価が跳ね上がるほど、世間から大きな注目を集めています。しかし「グロースハッカー」とは、まだまだ聞き慣れない言葉。具体的には、どんな活動をしているのでしょうか。

今回は、ママグロースハッカーズ発足のきっかけを作ったひとりであるKaizen Platform,Inc.の藏保萌子さんと、マネジメントを手がけるデジタルハリウッド福岡校の高橋政俊校長にインタビュー。Kaizen Platformはサンフランシスコ、東京に加えて福岡にも拠点を設け、福岡のポテンシャルにいち早く目をつけて福岡での活動を広げている企業、またデジタルハリウッド福岡校は、地元福岡で優秀な人材を多数輩出する学校。これら強力な後押しを受け、全国に先駆けて福岡で始まっている女性の働き方の新たな取り組みについて聞いてきました。

 

--「ママグロースハッカーズ」は、どんな経緯で立ち上がった組織なんですか?

藏保 「ママグロースハッカーズ」はもともと、子育て中のママを、企業やサービスの成長を仕掛けられる“グロースハッカー”へと育成する「グロースハック for Women」プロジェクトから派生して生まれました。この「グロースハック for Women」プロジェクトは、平成27(2015)年の福岡市「創業特区一周年サミット」で発表されたもので、私たちKaizen Platformと株式会社リクルートジョブズ、そしてデジタルハリウッド福岡校の3社が協働で、福岡市の支援を受けて立ち上げたプロジェクトです。

高橋 その年の9月から、デジタルハリウッド福岡校で「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」を開始し、卒業生9名が平成28(2016)年2月から「ママグロースハッカーズ」として活動しています。現在は、会社の創業を目指して準備を進めている最中です。

--そもそも、グロースハッカーとはどんな仕事なんでしょうか?

藏保 グロースハッカーとは、企業の成長(グロース)をテクノロジーの力で促進させる人(ハッカー)を指します。広告費やマーケティング予算をかけずに、自社サイトのアクセス数を増やしたり、ユーザーのエンゲージメント率(積極的反応)を高める活動をする人のことです。その中でもKaizen Platformでは特に、WEB上のUI/UXデザイン(わかりやすさ・使い勝手)を向上させる専門家のことをグロースハッカーと呼んでいます。

--具体的に言いますと?

藏保 例えば、航空券予約サイトのトップページの場合、写真や予約フォームの配置、キャッチコピーなどページを構成する要素によって予約成立数が大きく変わります。弊社では、デザイン案を複数用意し、一定期間テストをしてアクセス数やコンバージョン率(最終成果獲得率)を測る「ABテスト」という手法を使って、クライアントにWEBサイトの改善提案を行っています。グロースハックを有名にしたサイト改善の例としては、平成20(2008)年のオバマ大統領の大統領選挙です。寄付を募るWEBページを3パターン用意してテストし、最良の結果を出したトップページを本採用したところ、60億円ほど多く寄付金を集めることができました。サイト改善は、それぐらい大きな効果を生むんです。

--60億円! それは驚きです! 内容はよくわかったんですが、かなり専門的なお仕事ですよね…!?  ママグロースハッカーズのメンバーはWEBを専門的に学んできたスペシャリストなんでしょうか。

高橋 いえいえ、そんなことは全くないですよ。講座が始まる前は、ごく一般的な、WEBの知識もないママさんたちがほとんどです。8ヶ月間かけて、200時間以上を使って、WEBやデザインの制作をみっちりと学んで、覚えていきました。また受講中から、Kaizen Platformのクライアント案件を実際に使って課題を進めていくので、実践的な知識が身につくんです。

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藏保 それにグロースハッカーに関しては、WEBを専門的に学んだスキルの高い人よりも、消費者の目線に近いママさんたちの判断の方が的確な場合がよくあります。例えば、プリクラのWEBサービスのサイト改善案件では、プリクラのユーザーに一番近い22歳のママさんの提案が採用されました。説明文が細かく記載されていた箇所を、「(プリクラを使っている若い子たちは)ここはたぶん読まないから」とバッサリ削除して、ユーザーが直感的に使いやすいように整えたのがよかったようです。

高橋 そうなんです。車や不動産といった高額商品は、だいたい世帯主である男性の名前で資料請求が来るので、クライアント側もターゲットは男性だとばかり思い込んでいるんですよ。ところが、ママさんたちに聞くと、「これは、旦那さんの名前を使って、奥さんが資料請求しているはず」と言う。もしそうなら、サイトのデザインや説明文を、女性向けに作り直した方が、いい結果が出るはずですよね。そう考えてみると、女性の目線が必要な分野は、まだまだたくさんあるんです。特にママは、家庭の買い物を一手に引き受けている存在ですから、子供のため、旦那さんのため、そして自分のためと、商品を選ぶ際に複数の目線で考えられるのが強みですね。

藏保 すでにクライアント側も、ママ目線の重要さに気づきはじめています。商品のターゲットは女性で、サイトを見ているのも女性なのに、それを作っている人たちだけが男性っていう状況は、どこかおかしいですよね。女性向けのメッセージングをトータルで考えられる人のニーズが高まっている中、ママグロースハッカーズが先陣を切ってその役割を担えると考えているんです。

--なるほど、興味深いお話です。女性活躍の推進は日本の社会的課題となっていますがなぜ、全国に先駆けて、ここ福岡でこうした取り組みが始められたのでしょうか?

高橋 まず背景には、福岡のママさんたちが置かれている境遇があります。福岡は転勤族が多く、旦那さんの転勤で来ているママさんがとても多いんです。次の転勤がいつあるかもわからない状態で、ママさんが自分の専門性を高めて、キャリアを積み上げていくこと自体がなかなか難しい。離婚率が高く、総世帯数におけるシングルマザーの割合も全国平均より高いのですが、ママさんの働き口といえば時給制のパートか、細々とした在宅の仕事がほとんど。収入の伸びしろもなく、ママの自立や、生き生きと働ける環境はとても少ないのが現状です。

藏保 Kaizen Platformとしては、平成26(2014)年7月に、グロースハッカー1,000人を福岡で育てることを目的とした福岡グロースハックネットワークプロジェクトを開始していました。福岡はIT関連の優秀な人材が集まっていますし、アジアの玄関口でもあるので、今後グローバルに事業を展開していく上でも魅力的だったんです。そこに、「グロースハック for Women」の構想が立ち上がって、高橋校長ともお会いし、教育から仕事紹介、創業支援までを一気通貫でサポートできる産官学連携プロジェクトの体制が整いました。

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高橋 そうなんです。ナショナルクライアントを多く持つKaizen Platformに入っていただいたことで、講座の受講中から実案件を動かすことができ、講座終了後も継続的に仕事を続けられます。ママさんたちの自信にもつながっています。

藏保 ママに限らず、福岡はITコミュニティの結びつきが強く、お互いが切磋琢磨できる環境があるのが特徴的ですね。実際に、福岡のグロースハッカーはレベルが高く、今年行われたKaizen Platformに参加している全国のグロースハッカー約4,000人の頂点を決める「Japan Growth Hacker Awards 2016」でも、11部門中7部門を福岡の方が受賞しました。そのうちの3名は、デジタルハリウッド福岡校の講師ですし、すでにグロースハッカーとして起業している人もいます。

--クリエイティブ都市・福岡としての高い可能性を感じますね。ママグロースハッカーズの今後の展望を、教えて下さい。

高橋 まずはママグロースハッカーズが組織として自立し、自走できるようになることが第一ですね。個々の案件をこなすスキルを高めることはもちろん、ママ目線による地元クライアントへの提案や、二期生以降のママたちの教育や連携など、ママグロースハッカーズが担える役割はまだまだあります。「在宅で月収30万円」という目標を掲げ、活動を充実させていきたいですね。

藏保 ママグロースハッカーズの活動は、福岡に限らず、全国にいる子育てママの新しい働き方のモデルになりうると感じています。バリバリのキャリアウーマンを目指しているわけではなく、あくまで家庭と子育てが第一という姿勢は変わらない。だからといって、仕事のやりがいを捨てるのはおかしい、生き生きと充実した仕事がしたい! そんな、わがままなようでいて、実は当たり前の思いを、ママグロースハッカーズが実現し、全国にこのモデルを広げていければと思っています。

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【プロフィール】
藏保萌子(くらやす・もゆこ)さん
KAIZEN Platform, Inc.グロースハック for Women プロジェクト主宰。平成27年2月より、KAIZEN Platformにカスタマーサクセスマネジャーとして参画。消費財・不動産などの購買意思プロセスに女性が関わるサービスを得意領域とし、Webマーケティング・A/Bテストサポートを推進。平成28年7月からはグローバルDizdevチームとして福岡を起点に、グロースハッカーという仕事を女性の新しい働き方の選択肢にするべく活動中。

高橋政俊(たかはし・まさとし)さん
クリエーター養成スクール「デジタルハリウッド福岡校」校長、九州インターメディア研究所プロデューサー。福岡市や地元企業との産学官連携による独自の学校経営や教育スタイルを展開。各種教育機関、企業のコンサルティングやアドバイザーとしても活躍中。またタレント活動として、RKB「今日感テレビ」コメンテーター等の実績がある。

 

【関連情報】
現在「ママ向けWebグロースハッカー養成講座」の第二期生を募集中。応募締切は8月5日(金)まで! 気になるママさんは、ぜひ説明会に参加してみてください。
http://school.dhw.co.jp/school/fukuoka/seminar/mamagh.html



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