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福岡のWebマーケティング業界の“雄” アンダス前田さんが語る、徒手空拳の仕事哲学

“通販のシリコンバレー”と呼ばれるほど、国内大手通販企業が集積する九州。中でも福岡は、キューサイやエバーライフ、やずやといった、業界を代表する企業の拠点となっています。

そんな中、ダイレクトレスポンス(行動を引き起こす)に特化したWebマーケティング企業として、着実に存在感を増してきているのが、アンダス株式会社。平成28(2016)年6月には自社プロダクトの台湾進出も果たし、福岡の地の利を生かした展開を続けています。

代表の前田哲郎さんは、波乱万丈のビジネス人生を送ってきた人物。平成24(2012)年には「クリエイティブセンター福岡」を立ち上げるなど、福岡のクリエイティブ・コミュニティの発展にも大きく寄与しています。今回は、そんな前田さんのアツすぎる仕事人生と、経営哲学をお聞きしました。

--福岡市内の名門・大濠高校ご出身と聞きました。どんなご家庭で育ったんでしょうか?

前田 ウチは、結構真面目で厳しい家だったよ。父は九電、兄貴は国立大学からSONY、姉は音大を出て今はピアノの先生。そんな家系だったから、自由になりたいって気持ちが強くてね。別にグレてたわけじゃないけど、ヘヴィメタルのバンドを組んで、勉強は全然しなかったね。卒業したらメンバー4人で上京して、2年ぐらい東京で活動してたよ。当時は時給が安いアルバイトばっかりで、その中でテレアポの仕事だけやたら割が良かったから、飛びついたんだ。それが「光通信」だった。

--移動体通信やOA機器販売の大手ですね。

前田 そう。俺が入社した平成元年(1989年)当時は、まだ会社もできたばかりで、これから急成長するぞ、って時期だった。通信の自由化で、それまで独占市場だった電話回線事業に民間企業が一気に参入し、その回線申込の獲得とアダプターの営業が俺たちの仕事。高卒の若造だったけど、入社初日からアポが取れて2週間でトレーナーになった。時給も一気に上がって、19歳で月収35万ぐらいは稼いでたね。仕事ってこんなに面白いのか、って思ったよ。

--光通信といえば「独特な社風」で知られていますが、実際はどうでしたか?

前田 まぁ、数字が命の、ウルトラトップダウンの会社だよね。俺も竹刀持って、ガラスの灰皿投げながら、部下に喝入れてた時代もあったよ(笑)。でも徹底的に実力主義だったから、俺には合ってた。金髪で長髪、ライダースジャケットって格好だった19歳の俺に、社員の研修を任せてくれたわけだから。学歴も年齢も社歴も、一切関係ない。シンプルに、結果だけ。だから、どうすれば数字を残せるか、寝ても覚めても四六時中考えたし、日次損益も毎日出してた。BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)を完璧に理解して、利益を出していくロジックを身につけられたのも、この会社にいたからだと思うよ。

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--なるほど、ここで学んだことが大きいわけですね。とはいえ、当時はまだアルバイトで「バンドマン」だったわけですよね。どうしてバンド活動を諦めて「社員」になったのでしょうか?

前田 当時、社内で好きだった女性が、出世して札幌支店長になったんだよね。ところが向こうで成績が伸びなくて、俺に手伝って欲しいと言ってきたんだ。行ってみたら彼女、体調を崩すほど限界まで頑張ってて。俺が社員になって立て直すしかないって思って、その時バンドを諦めたんだ。結局、20歳の時に札幌に行って、2年後に彼女と結婚して、その翌年に娘が生まれた。札幌は、俺が支店長になってから半年間連続で目標達成させたし、そのあとも会社の全国展開に合わせて、どんどん新しい支社の立ち上げを任された。まず俺が行き、軌道に乗せたら後任に託して、また次に行って販路を確立する。そうやって年に4回は転勤してたね。ずっと単身赴任で、家族に会えるのは年に3回。120%、仕事人間だったね。

--すさまじいですね…。

前田 平成11(1999)年、東証一部に上場するタイミングで光通信を辞めて、取引関係のあった代理店に移ったんだ。光通信の株は50円額面が24万円まではね上がり、持ち株をやっていたから時価総額で5億円はあった。

--5億!

前田 でも、翌年にはITバブルが弾けて、株価は年末に1,000円にまでなった。結局1億円ぐらいは売り抜けたけど……。良くないことは続くもので、離婚もし、転職先の会社も目指していた上場を取り止めになって、辞めざるをえなくなった。ずっと一緒に仕事をしてきた信頼できる部下と、新しい会社を始めたんだけど、彼までが途中から音信不通になってしまって。その時は、どん底の気分だったね。「ああ、俺は一番信頼していた仲間とでさえ音信不通になってしまうような人生を歩んできたんだな……」って。

--それは辛いです…。

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前田 全てをリセットしたくなって、平成14(2002)年に、かつての部下が福岡で作ったホームページの制作会社に入ったんだ。

--ボロボロになってからのUターンというパターンですね。

前田 ああ。ここでも、最初は成績が悪かったけど、だんだんコツを掴んでいった。光通信時代は、回線とかコピー機といった、すでに形あるものを売ってたけど、ホームページは一から作っていくものだから、やりがいを感じてね。ただ作って納品するだけじゃなく、アクセスが少ないとか、ものが売れないという課題解決のためにどんなサイトであるべきかを考えた。そのあたりからマーケティングってことを考え出して、「宣伝会議」の講座を受けたり、体系的に学んでいったんだ。ただ、制作だけをやりたいという社長とだんだん意見が合わなくなってきて、ここで知り合った仲間たちと一緒に新しく会社を作ることになったってわけ。

--それがアンダスですか?

前田 そう。ただ会社を作ろうといっても金はなかった。困ってたある日、旧友から久しぶりに連絡が来たんだよ。「博多に来たから飲もう」とね。それで行ってみたら、音信不通になっていたかつての部下を連れてきたんだ。再会した時は、二人で抱き合って号泣したね。酒を酌み交わしながら「あの時はすいませんでした。前田さんが言うことなら、なんでもします」ってそいつは言うんだ。聞いたら彼は、その後会社を作っていて、年間売上30億もあると。それで俺は、「明日800万円振り込んでくれ!その金で会社を作る!」と語ったんだよね。そうしたら、本当に翌日800万が振り込まれたんだ。その金と、自己資金の200万を合わせて平成16(2004)年に作ったのが、アンダスって会社だよ。

--劇的すぎます! そうして設立から12年、順調に成長を続けてきたわけですね。アンダスの強みは何だと考えていますか?

前田 やっぱり会社を支えてくれる仲間だね。アンダスの名前の由来は、and US(アンド アス)なんだ。いろんなことがあって、次は本当に信頼できる仲間たちと、一からやっていこうと思って作ったのが、この会社だから。彼らと彼らの家族や周りの人たちを幸せにすることが、俺の仕事だと考えてる。サービスのコアはWebマーケティングで、それはずっと変わらない。俺はそれまでバリバリの営業会社で、営業しかやってきてないけど、マーケティングって営業活動そのものだから。Web制作の会社は、各論に入り込み過ぎてしまって、マーケティングという観点が薄くなる。アンダスは、ユーザーインサイト(ユーザーの本質的欲求)に力点を置いて、Web広告の提案から、運用、ホームページの制作、システム開発まで、全て社内で一貫してできる体制を作っているのが強みになってると思う。

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--今後は海外展開も積極的に行っていかれるとか?

前田 そうだね。福岡は、東アジアの主要都市が1,500km圏内にすっぽり収まるから地理的なメリットはとても大きいし、福岡の企業はもっとそれを生かすべきだと思う。アジアはまだ自社のECサイトを持つ文化がないから、日本から進出する越境ECは逆にチャンス。今回、福岡のある意味ライバル企業であるペンシルさんと組んで、台湾へのサービスを始めたんだけど、こういう手の組み方って福岡のコミュニティ力の強さを示してると思うんだよね。俺は福岡のコミュニティシーンを積極的に盛り上げていきたいと思ってる。2年前に「クリエイティブセンター福岡」を始めたのも、福岡のクリエイターを増やし、クリエイティブの価値向上を目指していきたいからなんだ。

--今後の展開を教えてください。

前田 やりたいことがいっぱいあってね。まずは、自社での通販事業。日本国内の一次産業から生まれる本当に体に良いものを、ジャパンブランドのポテンシャルがあるうちに展開していきたくてね。今期からは、ずっとやりたかった人材育成事業も立ち上げる。福岡に足りてない、企業の中のマーケターやプランナーを育て、強化していきたい。福岡は、スタートアップは盛り上がってるけど、メガベンチャーを育てていく施策はまだ少ないからね。だからこそ俺たち自身が、そんなスタートアッパーたちが目指したくなるようなシンボリックな存在になっていかなきゃいけないと思ってる。Facebookのユーザ数は現在16億人で、全世界の生産年齢人口の約1/3。それぐらい全人類に受け入れられて、人々に対していい影響力を発揮できるサービスを、作っていきたいね。

 

【プロフィール】
前田哲郎(まえだ・てつろう)さん
アンダス株式会社代表取締役社長。昭和46(1971)年、熊本生まれ福岡育ち。大手通信会社で約10年テレマーケティング事業に従事。その後WEB制作会社を経て、平成16年にダイレクトレスポンスに特化したWEBマーケティングカンパニー、アンダス株式会社を設立。コンサルティングをベースにWEB広告(運用型広告トレーディングデスク含む)・クリエイティブ制作・システム開発をワンストップで提供。また創業当初から単品通販を学び、アクイジションのみならずリテンション領域もフォローしている。平成24年にはクリエイティブセンター福岡を設立し、県下約600名のフリーランスをネットワークしている。

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