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「破壊的なイノベーションを!」 ポケモンGOから都市政策までをこなす、 福岡市のスーパー係長

福岡の新名所となった天神の水上公園や、FUKUOKA Smart EAST構想など、福岡の街を舞台に展開するビッグプロジェクト。これらに参画している福岡地域戦略推進協議会(FDC)のメンバーでもあり、ユニークな活動をしているのが、福岡アジア都市研究所の調整係長・中島賢一さんです。かつては民間のIT企業に勤務し、福岡県の職員として働いた後、福岡市役所に入庁したというユニークな経歴の持ち主。ゲームへの造詣の深さから、市の初代ゲーム・映像係長を務め、最近では「Pokémon GO(ポケモンGO)」の講演イベントで全国を飛び回る中島さんに、ご自身の活動について聞きました。

――中島さんは、市の職員の中でもユニークな経歴をお持ちですね。中でも、ゲームに関しては高い専門性をお持ちだとか。

中島 ええ、ゲームは子供の頃から好きでした。プレイするのももちろん好きなんですが、それだけじゃなく、自分で新しいゲームを発想して、ルールを作って遊んでもらうのが好きだったんですよ。民間企業に勤めていた頃も、趣味でオンラインゲームを作っていて、会員5万人の規模にまで成長して。子どもたちを相手にしたトレーディングカードゲームのイベントは、今も主催していて、月に一度のペースでもう10年以上続いています。ゲームというと親御さんには敬遠されがちなんですが、実際には家族や友達とのコミュニケーションが深まったり、数字の計算が速くなったりと、いい面もたくさんあるんですよ。

――昨秋にはゲーム「ポケモンGO」と地域振興を絡めた講演をされて話題にもなりましたね。講演タイトルはなんでしたっけ? たしか、キャッチーなタイトルだったような……。

中島 「中島、コンプリートしたってよ ~ポケモンGOと地域活性化の可能性を探ろう~」です。映画『桐島、部活やめるってよ』にインスパイアされて名付けました(笑)。

――(笑) そもそも、どんな経緯で生まれた講演なんでしょうか?

中島 まずはゲーマーとしての本能が起点にはなっているんですが……ポケモンGOを発売日にダウンロードして、最初はとにかく誰よりも速くコンプリート(ゲーム内に登場するモンスターを全て集めて、図鑑を完成させること)したかったんです(笑)。平日は6時間半、休日は18時間半をポケモンGOに費やし、リリースから17日でコンプリートしました。

――17日間でコンプリートですか? す、すごいです。

中島 その時に色々と「気づき」があったので、それをいろんな方々と共有したいと考えたのがきっかけです。例えば、「水があるところには水に関するモンスターがいるはず」等々の仮説も検証して実証できましたし、ゲームをするために街や公園への人出が増えたことも証明できました。こういった情報を精査して、ポケモンGOユーザーが欲しがる情報と、ポケモンGOを利用して地域活性化を考えている人たちが欲しがる情報の両方を提供する形で、イベントを開催したんです。

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(「ポケモンGO」リリース直後の、福岡市営地下鉄大濠公園駅の乗降客数を昨年度と比較したもの。このために人出や費用をかけて調査したのではなく、市が所有しているデータのみから実証したのが中島さんらしいアイデア)

――そのイベントタイトルが「中島、コンプリートしたってよ ~ポケモンGOと地域活性化の可能性を探ろう~」だったと(笑)。

中島 ええ、明治大学や九州大学などでも講演しましたよ(笑)。そもそも僕は、ゲームが非難される対象ではなく、社会的にも意味があることを証明して、もっと市民権を得たいという気持ちが常にあるんですね。ポケモンGOは、(ゲームの特性上)格好のチャンスでした。そこで、こうやってデータを積み上げて、説得力のある資料を作ったというわけです。それこそポケモンGOを開発したナイアンティック社の東京支社にもアポを取って資料を見せに行ったりして。

――そこまでやったんですか! 本気度がエグいです!

中島 誤解されないように言っておきますが、それも仕事の一環ですからね。また、僕はゲーム関連以外の仕事ももちろんやってます。今は、市の職員として福岡アジア都市研究所(URC)で調整係長を務めつつ、福岡地域戦略推進協議会(以下FDC)の運営メンバーでもあります。

――URCとFDC、ともにあまり耳馴染みのない名前なのですが、それぞれの役割を解説していただけますでしょうか?

中島 はい。まずURCは、福岡市に対して都市政策を提言するための研究機関で、市政を論じる根拠となる研究をするシンクタンクです。メンバーは基本的に研究員で、研究調査をし、論文を書いています。私は調整係長として、研究プロジェクトのコーディネーターをしています。一方で、FDCは福岡都市圏の成長戦略を担う“シンク&ドゥタンク”で、調査だけでなくプロジェクトの立案から実行までを行う産学官民が連携した組織体です。世界水泳をはじめとするMICE誘致の促進や、水上公園の整備など、民間企業の支援がなければ行政だけで抱えきれないプロジェクトを推進しています。経産省出身の石丸修平事務局長を筆頭に、九州財界のトップからNPO代表、国連ハビタット(国際連合人間居住計画)のメンバーなど、それぞれの専門分野を持つメンバーが名を連ねているのが強みですね。

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――ポケモンGOだけやってるわけではないんですね……。ちなみにFDCの活動目標は?

中島 平成32(2020)年までに福岡都市圏を雇用プラス6万人、GRP(域内総生産)プラス2.8兆円、人口プラス7万人にするという目標を掲げています。これはもちろん、福岡市の政策に沿って立案されています。発足から最初の3年間が、協力者を増やして内部充実を図る期間で、次の3年間はプレゼンスを高める期間。この4月からは第3フェーズで、これまでの活動を元に成果を出していく時期となります。

――中島さんは、その中でどんな役割を担っているんでしょうか?

中島 私はFDCの中でただ一人、キュレーターという肩書で活動しています。私はもともと、福岡市のゲーム・映像係長という立場で、福岡のゲーム企業やコンテンツ・ビジネスの振興をサポートしていました。その後、市のIT・スタートアップをサポートする部署にも所属。ITやIcTに詳しく、かつコンテンツ分野にも知見があるということで、石丸事務局長に誘われる形でFDCに加わったんです。正規軍というよりは遊軍的に活動し、面白いものを集める美術館の学芸員のようなイメージで、キュレーターと名乗っています。

――中島さんが参加したFDCの企画の中で、特に印象的だったものはありますか?

中島 どれも印象的なんですが、直近のものとしては平成28(2016)年11月に行われた、博報堂生活者アカデミーとトーマツベンチャーサポートらが主催の創造的ビジネス思考ワークショップ講座があります。これは、ITやスタートアップに欠かせない「ビジネス発想体質」を作る3日間の集中プログラムで、最終日はワークショップの成果を福岡市の鳥飼八幡宮内にある参集殿で開催したもので、本物の土俵を囲って、想像的ビジネス体質を鍛え上げました。土俵際でのユニークなアイデアの応酬で盛り上がりましたね。このように、民間企業の試みも地元のネットワークを活かして、実現をサポートしています。

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――土俵を囲って“勉強会”をするというのは面白いですね。柔らかいものから堅いものまで、あらゆる業務をこなしている中島さんですが、仕事上のモットーを教えてください。

中島 おカタいと言われてしまいがちな行政組織の中で、遊軍的に動いて案件を面白く仕立てられるキャラクターでいたいと思っています。といっても、デタラメをやっていては組織の中でつまはじきにあうだけ。まずは独創的な考え方を持つこと。そして、そのアイデアが組織にとっても利益があると見せる、あるいは実証すること。この二つをいつも意識していますね。協調するムードを作ることも大事です。いくら正論でも、厳しかったら人は付いてきてくれませんから。行く先々で楽しそうに人を巻き込みながら、破壊的なイノベーションを起こしていくという(笑)。

――破壊的なイノベーション! いい意味で、役所で働く方の発想とは思えないです(笑)。そんな中島さんに直接持ちかけられる、県外からの相談事も多いと聞きましたよ。

中島 ええ、ありがたいことに、気軽に相談していただけます。でも、私自身がフォーカスされる必要は全くなくて、柔軟な姿勢やマインドがシェアされればいいと思っています。福岡には、行政っぽくない変わり者がいると認識してもらって、日本の地方都市の中でも何か事を起こすなら、福岡が柔軟にパートナーシップを組んでくれそうだと、期待を高める役割を担いたいなと思います。

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【プロフィール】
中島 賢一(なかしま・けんいち)
民間IT企業を経て、福岡県に入庁。福岡県にてITやコンテンツ産業振興を活発に行い、ソフトウェア産業の中核拠点の福岡県Rubyコンテンツ産業振興センターを立ち上げる。平成25(2013)年4月より福岡市に移籍。ゲーム・映像係長や創業支援係長として、ゲーム、映像などのクリエイティブ分野やスタートアップ企業のビジネス支援に奔走。その後、公益財団法人福岡アジア都市研究所にて都市政策をベースとした研究事業のコーディネーターとして活動中。プライベートでは、10年にわたってトレーディングカードゲームのイベントを開催し、子どもたちからデュエルマスター(カードゲーム「デュエルマスター」を極めた人)と称されている。



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