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「クリエイティブの実験場」。東京から戻ったスタイリストが、福岡のクリエイターと作り上げる雑誌『LIRY』

平成25(2013)年12月に創刊した、福岡発のファッションマガジン『LIRY』。福岡市内のTSUTAYAやHMVなどでもコーナー展開され、業界人も注目する雑誌です。編集長を務めるのは、東京でスタイリストとして活動後、福岡に拠点を移した上野圭助さん。“肩書きを持たずに仕事がしたい”と語る上野さんに、福岡のファッションやクリエイティブの可能性についてうかがいました。

--『LIRY』はどういう経緯で創刊されたんでしょうか?

上野 平成24(2012)年ごろに福岡のある芸能事務所から「雑誌を出したい」という話をチラッと聞いたんです。だからぼくも「お手伝いできることがあれば言ってくださいね」ぐらいだったんですが、創刊時にはクリエイティブディレクターとして参加することになりました。もともと“ファッションスタイリスト”という肩書きにこだわりはなくて、「スタイリストが絵づくりしてもいい」って考えだったので、せっかくならやってみようと。それで数年間制作し、平成27(2015)年のリニューアルからは、編集長を務めています。

LIRYバックナンバー

--そもそもスタイリストになったきっかけは何だったんですか?

上野 生まれは大阪府なんですが、11歳の時に実家ごと福岡県糸島市に引っ越して、福岡の高校を卒業しました。その後はバイトをしてたんですが、手に職をつけるために東京に行って、ファッションの専門学校でスタイリストの勉強をすることにして。年齢が同級生より2歳上ってだけでも焦りがあったので、少しでも早く現場にでたほうがいいと思って途中で学校を辞めて、スタイリストのアシスタントになって経験を積んでいきました。

--行動力がありますね。東京で活躍されていたのに、なぜ福岡に戻ってくることになったんですか。

上野 実際に現場にでて感じたんですが、東京ってすでに完成されていて、仕事も常に取り合っているような状態。ぼくなんかが入る隙をなかなか見つけられなかったんですね。そうしているうちにすごく疲れてしまって。それなら福岡に戻って、自分のやりたいように仕事をしたいと思ったんです。

--実際福岡に来てからは、どうやって仕事を作っていったんでしょうか?

上野 もう、びっくりするくらい仕事がなくて(笑) だから、自分から活動して仕事を作り出さなくちゃいけない。街に出てかわいい子をスタイリングして撮影する「TENJIN GIRL」という活動をしたり、とにかく作品を増やしていきました。ファッションというジャンルにもこだわらなくなって、カメラマンさんと「石鹸1個で何ができるか」なんてテーマで、2人で毎日のように作品撮りをしてたんです。そういうのって、誰かが見ているものなんですよね。広告代理店の方から仕事をいただいて、それを機にいろいろと仕事が広がっていきました。

LIRY編集長・上野圭介さん

--上野さんの熱意が通じたんですね。その時いただいたお仕事はどういう内容だったんですか?

上野 主に広告でしたね。けれど、ぼくの飽きっぽい性分が出たのか(笑)、何ヶ月かやっていると満足できなくなってきて。「面白いことをしたい」って言っているわりに仕上がりは無難な場合がほとんどで、遊び心も自由もない。結局1年くらい広告の仕事を続けてから、「俺は東京の二番煎じみたいな仕事をしに、福岡に戻ったんじゃない」って思い直したんです。それからは、一緒によく仕事をしていたカメラマンとヘアメイクの3人で、自分たちで営業して仕事を取りに行く活動にシフトして、ブランドのカタログや、原宿のアパレル店「スピンズ」とコラボした福岡のフリーペーパー「HIGH de LOW」を作ったりしていました。

2017年9月発行のLIRY No.16,テーマは「お酒×お食事×お洋服」

--そういった活動が『LIRY』にもつながっていくんでしょうか?

上野 そうですね。『LIRY』に加わることになった時に、ぼくが強く感じていたのは、福岡のクリエイターは発信する場所があまりないこと。あったとしても発信の仕方が未熟。自分自身も福岡に戻って、自分なりの発信を続けてここまでくることができました。だから『LIRY』は、福岡のモデルやクリエイターが、この媒体を使ってスキルアップできるフィールドにしようと考えたんです。

--福岡のクリエイターたちに、自分の腕に磨きをかける「通過地点」として使ってほしい、ということですか?

上野 そう。本当だったら、この取材もぼく以外のクリエイターにオファーがくるくらい、突出した存在がいればいいなって思っているんです。今の時代って、誰でもカメラマンだし、誰でもスタイリスト。だからこそ、価値観を変えられるクリエイターじゃないと生き残っていけないよって、クリエイターにも日頃から言っているんです。

--だから『LIRY』はファッション誌と謳っていながらも、ファッションページだけでない、実験性も感じる内容になっているんですね。

上野 そうですね。実用的なリアルクローズ紹介じゃなく、見た目のかっこよさ、クリエイティビティを意識しています。ぼくのもともとのルーツであるメンズのスタイリングと、ファッションにこだわらない作品性、そこに福岡発のブランドの洋服を掛け合わせています。

--『LIRY』の編集長として、今後どうしていきたいとお考えですか。

上野 毎号、つくっている最中はしんどいんですが、クリエイターの発表の場を維持するのは大切なことだと思ってます。創刊5年ですから、そろそろ違う展開もしたいですね。将来的には、『LIRY』を福岡土産として定着させられるといいと思っています。博多駅や福岡空港のお土産売り場で「めんべい」の隣に陳列してあるみたいな(笑)。福岡のクリエイターで面白いヤツがいると、発見するきっかけにできればと思います。

--個人としての夢はありますか?

上野 これまで話してきた中で感じてもらってると思いますが、ぼくは従来のスタイリストの仕事にこだわっていないし、むしろその方が面白い仕事ができると思っています。例えば今なら、アニメーションの仕事をしてみたくて。アニメやゲームの中で、実在する場所をモデルにしたものって増えてきていますよね? だったらアニメのキャラのスタイリングをしたり、キャラのビジュアルを作り込む仕事があってもいい。主人公が着ていた服が流行して、街中に溢れたりして。これからも、肩書きにこだわらない、自由なスタイルで活動を続けたいと思います。これから自分にどんな肩書きが加わるのか、それとも肩書き自体がなくなって、ただの上野圭助となるのか、自分でも楽しみですね。

LIRY編集長・上野圭介さん

【プロフィール】
上野 圭助(うえの・けいすけ)
昭和57(1982)年、大阪府生まれ。11歳のころに福岡県糸島市に引っ越し、20歳までを過ごす。高校卒業後は2年間のフリーターを経て、上京。モード学園を中退後、スタイリストアシスタントを経て独立。主にメンズアーティストのスタイリストとして活動。平成19(2007)年に拠点を福岡にうつし、広告やカタログなど幅広い分野で活動。平成25年からは福岡発のファッション誌『LIRY』のクリエイティブディレクターに就任。その後、平成27年のリニューアルを機に編集長に。現在も、スタイリスト・編集長の二足のわらじを履きながら活動を続けている。



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