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福岡の魚はなぜうまい? そのわけを知る、“謎”の人物に会ってきた

福岡グルメはラーメンやもつ鍋だけにあらず、魚介類がおいしいことでも知られています。実際に、福岡市内の人口あたりの魚料理店の数は全国一位。水揚げされた魚はその日のうちに店頭に並び、舌の肥えたお客さんたちを喜ばせています。

しかし、日本はぐるりと海に囲まれた島国。豊かな漁場や鮮度の良さは、なにも福岡に限った話ではないはず。では、福岡の魚のうまさの秘密とは、実のところ何なのか。#FUKUOKA編集部は、そのわけを知る一人の人物を突き止めました。

その人物とは、FM FUKUOKAのパーソナリティを務める「謎のアジア人(愛称ナジ→)」さん。「ザ・メシュラン」というグルメコーナーを担当し、今まで取材した飲食店は6,000店超。北九州市・小倉の北九州中央卸売市場にも17年通い詰め、福岡の魚を語らせたら右に出るものはいない人物です。そんなナジ→さんに、福岡の魚がうまいわけを、とことん聞いてきました。居酒屋でお魚をつまみながら語れるウンチク満載です!

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——ナジ→さん、初めまして。お名前や職業など、気になることがいっぱいあるんですが、今日は魚の話を伺いに来ました。まずは、ナジ→さんが福岡の魚に詳しくなった経緯を教えてもらえますか。

ナジ→ 僕はね、あるラジオ番組内で「ザ・メシュラン」というお店紹介コーナーを担当してるの。最初は経費も出なかったから、取材も自腹でね。3軒回って、本当においしい店を1軒だけ紹介して。それがもう22年になるのよ。ラジオでグルメ番組なんてありえないって言われたんだけど、やってみたら評判でね。でも、僕が店の人から聞いた話をメモして、ラジオで喋る時に、細かい魚種なんかは間違っちゃうこともあって、リスナーからお叱りを受けてね。店主だって、魚の博士じゃないわけだから、僕も勉強しなきゃマズいと思って、故郷である北九州の魚市場に通うようになったの。全国のさかな好きが受検する日本さかな検定(=愛称「ととけん」)も、スタートした初年度に、大阪まで受験しに行ったよ。

——検定も受けるくらいハマってしまったわけですね。おいしい食材はいろいろあると思うんですけど、なぜ魚にこだわったんですか?

ナジ→ ヨーロッパは大地の料理、中国は火の料理、日本料理は水の料理って言われていて、水のおかげで発達したのが、日本料理なの。お刺身だって割鮮(かっせん)といって水分を吸わせたり、酢の物も煮物も水を使うでしょ。日本料理の真髄が、魚にあると思ったんだよね。それに、鶏も豚も牛も養殖がほとんどだけど、魚介類は今でも天然モノを食べられるから。天然の命をいただけるっていうことは、ありがたいこと。だから、魚を食べてるとぜいたくな気分になるんじゃないかな。

——福岡の魚が特別にうまい理由って、あるんですか?

ナジ→ うん、3つポイントがあると思う。まずは、漁場ね。だいたい日本で良質な漁場といえば、北部九州と北陸と三陸沖の3つ。海流がぶつかるところはプランクトンが多いから、魚が集まるんだよね。特に北部九州は、南からの対馬海流と北からのリマン海流がぶつかって、漁場として豊か。福岡は都会のわりに、漁場が近いしね。それから二つ目は、福岡は九州中からいい魚が集まってくること。東京でいう築地みたいにね。玄界灘とか山陰、瀬戸内もあって、魚種も豊富。五島や壱岐の方は、地元で獲れてそのまま島内で消費しちゃう魚も多いけど、本当にいいモノは福岡まで運ばれてくる。ちゃんとした値が付くからね。知ってた? 長浜鮮魚市場って、4年連続で取扱額が全国1位なのよ。

(※ 水産物を扱う市場には、水揚地に開設される産地市場と、消費地に開設される消費地市場がある。福岡市中央卸売市場鮮魚市場(通称長浜鮮魚市場)は、全国にある産地市場の水産物取扱金額において、4年連続で全国1位。築地市場などは、消費地市場のためここには含まれない)

——それは知りませんでした! 福岡にはお刺身を出す店が多いですもんね。

ナジ→ 特に福岡の人は、コリコリした食感のお刺身が好きなの。だから日にちが経ってもコリコリ感を保持できるように、扱う人がちゃんと処理をしてるんだよね。死後硬直しないように、生き締めして、血抜きをして、最後に神経を抜く。こんな手間のかかる作業を、福岡の漁師や市場の人、生きた魚を仕入れる店の板前さんたちが、みんなやってるんだから。これが、福岡の魚がうまい三つ目の理由。つまり、魚を扱う人の技術レベルが高いってこと。特に神経を抜くって作業は難しいから、築地から見学に来たりするぐらいなのよ。関東では、お刺身は寝かせて熟成させて食べる文化だから、そんな下処理は必要ないからね。

——文化が違うんですね。

ナジ→ そうそう。これは自説だけど、関東の醤油って辛いでしょ? あれは、お刺身が熟成しててアミノ酸が豊富で甘みがあるから、醤油は辛い方が合うんだよね。九州はその逆で、醤油がすごく甘いでしょ。こっちはコリコリした食感を楽しむことを優先しているから、魚にアミノ酸が少なくて、それを甘い醤油で補ってるんじゃないかなと。

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——なるほど! そんな説は初めて聞きました。確かに福岡では、魚種によって生醤油と刺身醤油を使い分ける店もありますね。

ナジ→ 福岡は魚種が豊富で、板前さんの技術も高いから、うまい魚が手軽に食べれるでしょ。それで、食べ手のレベルも高いんだよね。これは福岡の特徴だと思うけど、海鮮屋に入ったら「とりあえず刺し盛り」って頼む人がすごく多いの。何のお刺身かもわからないのに、お店にお任せ。それって、店を信頼してる証拠だよね。そんな常連さんのことは店側も大事にするから、気を利かせてくれて。「あの人は青物があんまり好かんっちゃん。やけん白身をもう一品増やしとこ」って。いい関係性だよねぇ。

——そんなお店の常連になってみたいです。でもいいお店かどうかは、どう見極めたらいいんですか?

ナジ→ まずは、単品の魚とかお刺身の種類が多い店ね。たくさんの生魚を仕入れることは、店にとってはリスクでもあるから。それができるってことはお客さんが多い証拠だし、回転率がいいってこと。それと、小鉢のポテトサラダがおいしい店は大体間違いない。ランチだったらミニサラダね。サラダって手間がかるから、そこを惜しまずやってる店はいい店。焼酎のボトルキープがいっぱい並んでいる店も、大体いいね……あれ、魚の話じゃなくなっちゃったな。

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(謎のアジア人さんは昨年から、グルメマガジン「ソワニエ」でも魚に関する連載をスタート)

——かえってわかりやすいです。福岡に遊びに来たら、この魚をぜひ食べてほしい!というのは?

ナジ→ やっぱり青物、特にサバね! 博多はサバが名物だから。関東ではサバは生で食べないからびっくりする人もいるだろうけど、大丈夫。太平洋側のサバは、アニサキスっていう寄生虫が刺身の部分にいるから、食べると当たっちゃうんだけど、日本海側のサバはそんなことはほとんどないから、めったなことじゃ当たらないよ。年末年始だったらブリもおいしいね。お金持ってるなら、フグとかアラもおすすめだよ。

——ちなみに、ナジ→さんがいちばん好きな魚は何ですか?

ナジ→ そりゃあ、愚問ってやつだなぁ。料理の仕方で違うし、季節でも違うし。やっぱり旬の魚が好きだな。天ぷらだったら夏のメゴチ、秋のハゼ。お刺身は青魚だったらイワシ。白身だとオコゼ。ありすぎて、選べないね。それぐらい福岡は、魚に恵まれてると思うよ。せっかく福岡にいるなら、行きつけの店を作って、魚を存分に楽しむのがいいと思うよ。

 

【プロフィール】
謎のアジア人(なぞのあじあじん)さん
FM FUKUOKAのプロデューサー兼パーソナリティ。「SUPER RADIO MONSTER ラジ★ゴン」火曜担当(平成29年9月まで)、「BUTCH COUNTDOWN RADIO」で「ザ・メシュラン」のコーナーを担当。グルメマガジン「ソワニエ」にて、「謎のアジア人が魚について知っている二、三の事柄」連載中。ちなみに「謎のアジア人」の名前の由来は、パーソナリティを始めた当初、バリ島にすでに90回行くほどハマっていて、すっかり現地の人の風貌だったからだとか。日本さかな検定合格第1期生。



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