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落合陽一氏が語った「福岡再興戦略」 2050年のアジアで、福岡が取るべきポジション

起業家であり大学の研究者、メディアにひっぱりだこの論客にして、メディアアーティスト。時代の転換点が生んだ、稀代のスター・落合陽一さんが、超多忙なスケジュールの合間を縫って、福岡に来ました。2018年9月22日(土)、23日(日)に行われた、デジタル技術とエンターテインメントの融合イベント「The Creators」内で、高島宗一郎福岡市長らとのスペシャルトークセッションに参加するためです。『日本再興戦略』などの著作で、テクノロジーを軸に今後の日本のあるべき姿を描いてきた落合さんは、福岡という都市にどんな可能性を見ているのか。#FUKUOKA編集部は、イベント前に落合さんの控え室を訪問。わずか15分の短いインタビューでしたが、高速回転する落合さんの頭の一端をうかがえる、貴重な時間となりました。

控室でインタビューを受ける落合陽一さん

汚い街の方が、落ち着くんです(笑)

—まずは、落合さんと福岡との関わりについて教えてください。何かゆかりがあるんでしょうか?

落合 全くないです。でもカンファレンスやイベントで、しょっちゅう来てます。福岡の街は好きですよ、ちゃんと経済活動が行われてる感じがして。汚いけど、手入れされてる印象です。

—どういうことですか?

落合 僕は地元が六本木なんで、中洲を歩いていると落ち着くんです。渋谷みたいに、汚いけど人が集まるというのが、都市において重要な点だと思っていて。逆に、きれいで閑散としているショッピングモールとかは苦手です。大手のデベロッパーが、みんなが憧れる要素を寄せ集めて作ったような街って、あざとさを感じてしまって。誰かの理想に基づいて街を作っても、様式美にしかならない。ヴェルサイユ宮殿はきれいだけど、あれが街の真ん中にあったら経済活動が行われる気配を感じないでしょ?

落合陽一さん

—確かに。

落合 福岡の街は、お高くとまってる感じがないですよね。高級な百貨店があれば、中国や韓国のお客さんがたくさん来るような観光スポットもある。銀行など金融系の取引も回っているし、近くに面白いキャバクラやラーメン屋があって。そういうものが全体的にバランスよく、小さい街の中に集まっていると、必然的にダイバーシティが高くなりますよね。そういう街はちゃんと経済活動が行われているから、汚れていくし、それをきれいにしていこうという動きもある。その健全さが、僕にとって心地いいですね。

スタートアップを保護して、10年後に勝てるサービスを

—他の日本の都市と比較して、福岡のいいところはなんでしょう?

落合 大阪は東京を気にしてるし、東京はシリコンバレーやNYばっかり見てるけど、福岡の人は東京のことをあまり気にしてないところが、いいと思います。僕らは、2050年のアジアがどうなっているか、中国やインドと東南アジア諸国がどういうバランスにあるか、いくつかのシナリオを考えて、そこから逆算して今すべきことを考えないといけない。でも今の東京は、2020年のことしか頭にないですからね。福岡は、地理的にもアジアに近いし、中国や韓国の存在も身近だから、都市としての立ち位置がこれからさらに重要になると思います。

The Creatorsスペシャルトークセッションの様子。
(The Creators スペシャルトークセッションの様子)

—落合さんが予想している、2050年の中国やアジアの状況は、どうなっているんでしょうか。

落合 中国は、おそらく少子高齢化社会の真っただ中にあって、外側に力を使う余裕がなくなっているんじゃないでしょうか。合理的な選択をする中国という国が、自国の人口が減少して高齢化していった場合、どんな政策をとるのか。EUは、国境をなくして人が自由に行き来できる状態を作りましたが、中国はどうするでしょうね。さらに北朝鮮は、2050年にはどうなっているのか? 30年は長いですし、どんなことでも起こりえます。30年前に、今のような社会の到来は誰も予想できてなかったわけですから。そして日本。悲しいことにその頃には、日本の人口は6,000万〜8,000万人にまで減少しているでしょうね。テクノロジーを活用して人の手が必要なシーンを減らしていかないといけないでしょうし、支えきれないおじいちゃんやおばあちゃんは、海外の人がケアするなんて話も出てくるかもしれない。そんな状況下で、国境を接している福岡という街が、アジアに対してどんな存在感を感じさせているか。また、国内の人もお金を落としたり交流したりしたくなるような魅力ある街になっているか。それが問われていくでしょうね。

—福岡市が進めているITやスタートアップ施策が、その突破口になるかもしれません。

落合 それは、可能性のある話だと思います。スタートアップの世界は、グローバルスタンダードが重要とよく言われますが、シリコンバレーと日本では資本力の差がありすぎて、グローバルに打って出てもあっさり負ける可能性が高い。むしろ我々に必要なのは、保護戦略です。日本が抱えている課題を解決してくれるモノやサービスを、どう外から守り、成長させて、10年後にグローバル競争力を持たせるか。保護戦略なしに、国内の労働を加速させたら、疲弊するに決まってますから。

—そうですね。

落合 10年前、僕らはジャック・マー(中国のEC大手「アリババ」の創業者)のことをバカにして笑ってたんですよ。グレート・ファイアウォール(中国政府によるネット検閲システム)の内側で、Amazonの真似をしてるだけだ、すぐになくなるだろうって。でも、その頃に日本と中国のGDPは逆転して、今はもう中国のGDPは日本の2倍です。AmazonやFacebook、Googleに次ぐ巨大なITサービスを、すでに中国は国内でいくつも抱えているんです。あの当時、彼らがAmazonやAppleに勝っている要素はひとつもなかったのに、10年で大きな産業を作り上げた。このことを僕らはちゃんと反省しないといけないと思います。今の日本は、放っておいて「世界で通用するもの」がすぐに出てくるほど、豊かな状態ではない。「世界で通用しない」と嘆くんじゃなくて、「世界で通用させる」ために、10年かけて育てればいいんです。しかし、それを東京でやろうとすると人口規模も都市規模も大きすぎて、排他的になり過ぎちゃう。そう考えた時に、福岡には希望があると思います。東京に比べて適度に保護的な環境が整っている福岡から、日本を再興させるスタートアップが生まれてくることも、あるかもしれませんね。

落合陽一さん

【プロフィール】
落合陽一(おちあい・よういち)さん
昭和62(1987)年生まれ。ピクシーダストテクノロジーズ株式会社 代表取締役。平成27(2015)年より、筑波大学図書館情報メディア系助教デジタルネイチャー研究室主宰。平成29(2017)年よりピクシーダスト社と筑波大学の特別共同研究事業「デジタルネイチャー推進戦略研究基盤」准教授に。機械知能と人間知能の連携について、波動工学やデジタルファブリケーション技術を用いて探求。またメディアアーティストとしての活動も多数。

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