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東京の仕事を福岡にいながらにしてこなす ランサーズCOOが語る、場所と時間にとらわれない新しい働き方とは

クラウドソーシングサービスの最大手、ランサーズ株式会社(代表取締役社長CEO 秋好陽介さん)が、日本で初めてオンライン上で仕事の受注・発注が完結できるクラウドソーシング型マッチングサイト「ランサーズ」を始めたのは平成20(2008)年のことです。

現在、「ランサーズ」への登録者数は、毎月数万人以上にも上り、企業・個人双方から注目を集めています。同社が提唱する「時間と場所にとらわれない新しい働き方」とはどのようなものなのでしょうか。

同社COOの足立和久さんにお話を伺いました。

――「ランサーズ」に登録されている方は、地方在住の方も多いのでしょうか?

足立 はい。弊社ではアウトソーシングで仕事を受注する個人を、「ランサー」とお呼びしているのですが、そのランサーのうち、実に75%が東京以外の方です。一方、クライアント企業は、55%が東京の企業。「東京の溢れた仕事を、ネットを使って地方に供給している」イメージを思い浮かべていただけるとわかりやすいでしょう。これまでの仕事の総依頼件数は60万件に及んでいます。

――仕事を受ける側のランサーは、東京に住んでいなくても、地方にいながらにして東京の仕事を受けることができるというわけですね。オンライン上の仕事とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?

足立 大きく分けて、開発、(ホームページなどの)制作、デザイン、ライティング(記事執筆)の4つがあります。最近のビジネストレンドは、翻訳・動画編集の増加です。1社のクライアント企業が依頼すると、複数のデザイナーから提案が挙がってくるような、いわゆる“コンペ形式”のサービスをよく利用いただいています。仕事を探している方からすると、パソコンベースで行うネット系の仕事は、時間の拘束もあまりなく、空いている時間で作業が行えるというメリットがある。クライアント企業としては、“ツーカー”状態で仕事をできるランサーを確保していれば、仕事を頼みたい時だけ発注できるので、月額の固定費を抑えられるメリットがあります。

――まさに現代の雇用環境、社会状況に即したサービスといえますね。

足立 そうなんです。ところが弊社の場合、現状、クライアント企業からの依頼数に対して、圧倒的に成約数が少ない。言ってしまえば、ランサーズ上では大量の仕事があるのに、成約に結びついていないという、非常に“もったいない”状態となっているのです。

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――そこが現状の課題というわけですか?

足立 ええ。依頼数に対し成約数が少ない理由としては、仕事を依頼するクライアント企業と、実際に作業するランサーとの“溝”が大きいことが挙げられます。

たとえば、クライアント企業がアプリケーションの開発依頼をするとき「こんな感じのアプリをつくって欲しい」というフワっとした依頼だと、ランサー側も対応が難しい。ランサーの立場からすると、作業を具体的に指示した「開発要件定義書」もなしに、いきなり“丸投げ”されても困ってしまいます。指示があいまいなクライアント企業よりも、「開発要件定義」が明確な案件を受けた方が、間違いなく良いパフォーマンスを発揮できる。その結果、一部の“発注スキル”が高い企業、ちゃんとした指示が出せる企業に応募が集中しているのです。

――ランサー、クライアント双方にとって、よくない状況ですね。

足立 そこで、細かく指示出しするのが不得手なクライアント企業から「自分達が何をやりたいか」というところを汲み取り、個人のランサーに上手に伝える、双方の「翻訳機能」を担う“ディレクション”にニーズがあると実感しました。

前述の例で言えば、クライアント企業からの「こういうアプリを作りたい」という受注要件を、まず弊社が一度受けてから、ディレクション能力のあるパートナー企業に業務委託するんです。

これは、ライティング(記事執筆)で例えるなら、「編集プロダクション」がオンライン上にあるようなもの。編プロでは、クライアント企業の意図を汲み取って、制作物の方向性や内容をすり合わせ、個人のライターに割り振り、進行管理から編集、完成品のクオリティ管理をして納品するという一連の流れを統括するディレクション業務を担うわけですね。全体を統括し、専門的知識を持つ「ディレクター」が間に入ることで、クオリティを保証できます。

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――Iターン、Uターンに限らず、東京では福岡のような地方都市への移住希望者は増えていると言われていますが、その「空気」「におい」みたいなものを感じることはありますか?

足立 それは感じます。一方で、移住「希望者」はものすごくいらっしゃいますが、「いつ移住するか」、という最終的な意思決定へのハードルがすごく高く、もう一歩踏み出せない方も多いとの印象を受けます。移住する上で、一番のネックが仕事・収入ですから、不安はあるのだと思います。

たとえば独立願望のあるランサーでも、すぐに独立するのはリスキーです。みなさんの傾向を見ていると、収入の50%くらいをランサーズで担保――つまり副業として収入の半分を稼いで――「これならなんとかなるだろう」と見込めた時点で退職し、フリーランスになる方が結構いらっしゃる。おそらく、移住も同じで、移住した先での「収入ベース」をそれなりに見込めないと、なかなか難しいですよね。移住先での収入ベースをどうするか? そこで役立つのが弊社のサービスです……って、すっごくプロモーションっぽいですが(苦笑)。

――いえいえ、さすがです(笑)。ただ、実際、クラウドソーシングである程度「実績」を積んでから、移住するというのはとても現実的な方法に思えます。

足立 仮にフリーランスの方、もしくは移住と同時にフリーになろうと思われている方であれば、今住んでいる場所でオンラインでの実績を積んでから移住した方がいいでしょう。もしくは移住後に、基本オンラインのみでやり取りができるように、事前にリアルの場でしっかりつながっておいた方がいいと思います。ランサーズでは「チャット」サービスもあるのですが、クライアントと信頼関係をしっかり構築していれば、移住で距離が離れてしまっても、チャットでコミュニケーションを取れます。基本はオンラインでやり取りして、たとえば3か月に1回、半年に1回などのペースで、(クライアント企業のある)東京に出て来て、直接会って打ち合わせをする。そういうやり方が地方移住系フリーランサーにとっては今後“鉄板”になっていくのではないでしょうか。

――そもそもクラウドソーシングを使って成功する人って、どんなタイプの人なのでしょうか?

足立 オンラインで全部完結するコミュニケーションというのは、難しい部分はあります。ただ、ランサーズに登録されている方に限っていうと、メールのレスポンスが速い人は、クライアントから重宝がられているようです。レスポンスの速さだけでなく、ビジネスの相手に気遣いが出来る方は、クライアントから「この人にまたお願いしたい」と評価されて、リピートして仕事を発注される例はありますね。

――普通に社会人としての「基本動作」が重要ということですね。足立さんは福岡県出身で福岡事情もお詳しいと思いますが、正直、フリーランサーが福岡に移住するのはアリですかナシですか!?

足立 むちゃくちゃアリだと思います。福岡はローコストで生活が成立する街。あくまでも僕個人の意見ですが、ランサーズでの収入ベースが月に15万円あれば、充分、暮らしていけるのではないでしょうか。東京などに比べて物価も安いですし、家賃もリーズナブル!福岡市内は自転車で移動できる距離ですから、交通費もかからない。単純にランサーズの仕事だけでは難しいかもしれませんが、移住後にその土地で人脈をつくっていけば、そこから新たな仕事につなげていけると思います。実は、平成26(2014)年からは、地元の西日本新聞社さんと一緒に、九州の企業と個人をマッチングするクラウドソーシングサイト「九州お仕事モール」というサービスを始めています。九州に特化したマッチングサイトということで、福岡に限らず、九州全体の経済活性化を目指していますが、福岡に移住した際には、こちらをご利用いただければ、福岡で新たな仕事先を見つけるのに大いに役立つと思います。

――足立さんも福岡に戻りたいと思っているのでは?

足立 それはもう!!  今は東京に住んでいますが、東京という街は、バリバリ稼いで、バリバリ使う、稼いだ分だけ消費するイメージ。人間関係を含め、リアルな生活の基盤が残りにくい街とも言えるかも知れません。もちろん、自分に投資して、経験を積んで成長させていく街としては、とても魅力的だと思いますが、生活しやすいかというと決してそうではない。

僕は、ビジネスに関しては常に飛び回っていたいタイプなのですが、生活の拠点は、やはり福岡に持ちたい。いずれは、福岡・東京・海外と、それぞれ3分の1ずつくらいの配分で働きたいものだと、弊社CEOの秋好とも、よく話していますよ(笑)

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【プロフィール】
足立和久(あだち かずひさ)氏 

昭和52(1977)年生まれ。福岡県大野城市出身。九州大学文学部哲学科を卒業後、地元福岡で情報誌の編集者として働いたのち上京し、平成17(2005)年に楽天株式会社入社。平成24(2012)年からグリー株式会社のマーケティング事業本部で、事業開発室長とデベロッパーリレーションズ部長を兼任。平成26(2014)年5月にランサーズ株式会社の取締役COO兼事業開発部部長に就任。同社において、事業開発および事業戦略を担当。

【関連リンク】
ランサーズ株式会社
http://www.lancers.co.jp/



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