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御年82歳! 下駄の鼻緒をつくるスタートアップおばあちゃんに会ってきた

今月で1周年を迎える福岡市・天神のスタートアップカフェ。会社を立ち上げたい、こんなサービスをつくってみたいという人々で日々にぎわうこの場所は、若い人ばかりでなく、“人生の先輩”といえるようなご高齢のスタートアッパーまでもが足しげく通っています。

今回お会いしたのは、スタートアップカフェでも“松尾のおばあちゃん”の愛称で親しまれている松尾美知江さん。松尾さんは下駄の鼻緒を手作りしている職人さんで、御年なんと82歳! 傘寿を越えているとは思えないほど矍鑠(かくしゃく)とされている松尾さんですが、鼻緒作りを始めたのはここ2~3年のことだといいます。なぜ、松尾さんは鼻緒を作ることになり、そしてスタートアップカフェに訪れることになったのでしょうか。ご本人にお話を伺いしました。

「下駄をなんとかして売りたい!」そんな気持ちで、ここに訪れました

――松尾さんが80歳を前にして、鼻緒づくりをはじめられたきっかけは何だったのでしょうか?

松尾 私、もともと物をつくるのが大好きだったんです。ものづくりと言いましても、ちょっとお裁縫をするだとか、折り紙をするといったことではなくて、近くのホームセンターで買ってきた角材やベニヤ板をのこぎりで切って、トンカチを叩いたりしながら棚や行灯を作ったり……意外と本格的でしょう?

それで徐々に自分の作品の数も増えてきたので、自宅をギャラリーにしたくなったんですけれど、年寄りのおばあちゃんが一人でギャラリーをやると言い出したら、さすがに周りの人に止められてしまいました(笑)。その後、ひょんなことでお隣の大分県の日田市の杉を使った下駄職人の方と出会うことがありまして、その方の下駄が本当にすばらしかったんです。「あぁ、こんな下駄が玄関に置いてある生活って、ステキ。一人でも多くの人に日田杉の下駄を履いてほしい」と思い、その職人さんにお願いして鼻緒づくりをお手伝いさせてもらうようになったんです。

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――では、最初はご趣味で鼻緒づくりをはじめられたんですね。

松尾 そうですね。でも、下駄を売らないと職人さんも生活ができませんから、私もどうにかして下駄を売る方法がないかと試行錯誤していたんです。けれども、私の心情としてあまり高い値段では売りたくありませんでした。というのも、ちょっと自宅のポストに新聞を取りに行ったり、お庭の草むしりをしたり、日常の中で気軽に下駄を履いてほしかったんです。でも、そんな“つっかけ”に高いお金を払いたくはないでしょう(笑)。そこで、どうやったら下駄をもっと売ることができるかと、こちらのスタートアップカフェに相談にやってきたんです。

――そもそもスタートアップカフェを知ったきっかけは何だったのですか?

松尾 はじめは新聞の投稿を見て知りました。それで早速、天神に行ってみたものの、「こんな私みたいなおばあちゃんが相談に行ったら、笑われるかしら……」と思って、スタートアップカフェの入口の前をうろうろしていたんですよ(笑)。とはいえ、私も図々しくてチャレンジ精神旺盛な“博多っ子”ですから、「まぁ、門前払いされてもよかよか! 誰も見ちゃおらんやろ!」と、思い切って中に入ってみました。すると、コンシェルジュの方が「今日は、どうされましたか?」と笑顔で迎えてくださったんです。

――その時は具体的にどんなことを相談されたんですか?

松尾 最初は「とにかく下駄を売りたい」と相談しました。ステキな下駄はあるけど、売るためのアイディアはさっぱり。そこでお知恵を拝借しようと思ったんです。すると、コンシェルジュの方のはからいで、まずはスタートアップカフェがあるTSUTAYA BOOK STORE TENJINさんの一角をお借りして、この夏の間、下駄を売らせていただくことになりました。下駄が店頭に並んだ時は、「まさか、私の下駄がこんなおしゃれな本屋さんで売られるなんて!」と感動してしまいましたね。

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■ここで相談できたから、知ることができたこともあります

――それからも、継続してスタートアップカフェにはいらっしゃっているんですか?

松尾 はい。1ヶ月に1度のペースですが、お邪魔しています。最近はもっぱら若いスタッフの方と世間話をしているばかりなんですけれどね(笑)。でも、以前にはこんな有り難い経験もしました。以前、こちらのコンシェルジュの方にも下駄を買っていただいたことがあったんですが、その方か「おばあちゃん、下駄って思っていたよりも鼻緒がきつめなんですね」と言われたことがあったんです。それまでは気づきもしなかったんですが、下駄というものは履いたときに前のめりに擦って歩きますから、鼻緒もきつめにしめていたんです。けれども、最近の若い方は下駄でもかかとを上げて履かれる方が多いようで、そうすると少し鼻緒がきつすぎるんですよね。それから、ちょっとゆるめにしめるようにしました。こうして若い方から履き心地を直接聞けるのは、スタートアップカフェならではの経験だと思います。

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――なるほど。では最後に、これから何かスタートアップカフェでチャレンジしたいことはありますか?

松尾 できれば、買っていただく前に履き心地を確かめてもらえる機会をつくれるといいですよね。そうすれば、これまで下駄に興味がなかった方にも、少しでも「履いてみようかな?」と思えるきっかけになるかもしれません。それに、スタートアップカフェはコンシェルジュの方もスタッフの方も、こんなおばあちゃんにも親身になって相談に乗ってくれる場所ですから、私だけではなくてもっとたくさんの人にも足を運んでもらいたいですね。

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その後、大野城市にある松尾さんの自宅にお邪魔し、実際に鼻緒づくりの様子を拝見。小さな手で丁寧に、そして力強く鼻緒を下駄板に結び付けながらつくる松尾さんの下駄は、「履いた人に幸せになってほしい」という思いから、下駄の裏にお多福(おたふく)のハンコが押されています。

読んで字のごとく“老若男女”に愛されているスタートアップカフェ。ここから日本最年長、そして最年少のスタートアッパーが誕生する日もそう遠くないかもしれません。

※TSUTAYA BOOK STORE TENJINでのお多福下駄の取り扱いは夏季限定のため終了しております。


【関連リンク】
スタートアップカフェ公式サイト
http://www.startupcafe.jp/

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